健診結果の「中性脂肪(トリグリセライド/TG)」の欄に赤字が入っていた。でもLDLコレステロールは正常だし、どのくらい気にすればいいのかわからない。そんな方に向けた記事です。
患者さん


この記事では、中性脂肪の数値の読み方を、日本動脈硬化学会のガイドラインと厚生労働省の判定基準に沿って整理します。
まず結論:あなたの数値はどの段階?
| 空腹時採血 | 随時採血 | 位置づけ | まずやること |
|---|---|---|---|
| 149以下 | 174以下 | 基準範囲内 | 現状維持 |
| 150〜299 | 175〜299 | 保健指導判定値 | 飲酒・食事・体重の見直し |
| 300〜499 | 受診勧奨判定値 | 生活習慣を改善したうえで医療機関を受診する | |
| 500〜999 | 受診勧奨判定値を超えるレベル /専門医紹介も検討される水準 | 早期に医療機関を受診する | |
| 1,000以上 | 急性膵炎のリスクが高い水準 | できるだけ早く受診する。強い腹痛・背部痛・嘔吐があれば救急受診 | |
なお、空腹時150mg/dL以上(随時175mg/dL以上)はすべて「高トリグリセライド血症」という診断名にあたります。上の表は、その中での程度の目安だとお考えください。
ただし、この表を見る前に確認してほしいことがあります。その採血は空腹時でしたか?
空腹時か食後かで、基準値が変わります
これは2022年のガイドライン改訂で明確化された、比較的新しいルールです。中性脂肪は食事の影響を強く受けるため、採血のタイミングによって基準が2つあります。
| 採血のタイミング | 高トリグリセライド血症とされる値 |
|---|---|
| 空腹時(10時間以上の絶食) | 150mg/dL以上 |
| 随時(空腹時と確認できない場合。ただし健診では、食事開始から3.5時間以上たってからの採血が条件で、食直後の採血は使えません) | 175mg/dL以上 |
健診は通常、絶食で受けるよう案内されるので空腹時の基準が使われます。ただ、「前日の夜遅くに食べた」「飲み会だった」場合は、10時間の絶食が成立していても数値は高めに出ます。









中性脂肪が高いと、何が問題なのか
中性脂肪は、体が使うエネルギーの貯蔵形態です。食事で摂った糖質や脂質のうち、余った分が中性脂肪に変えられ、脂肪細胞に蓄えられます。悪者ではなく、本来は生存に必要な仕組みです。
問題になるのは、血液中に増えすぎたときです。
① 動脈硬化のリスクが上がる
ガイドラインでは、空腹時・随時にかかわらず、中性脂肪は将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症・死亡を予測するとされています。中性脂肪が高い状態では、HDL(善玉)コレステロールが下がり、LDLが小型化して血管壁に入り込みやすくなる(small dense LDL)といった変化も同時に起こります。
つまり「LDLは正常だから大丈夫」とは言い切れないということです。
② non-HDLコレステロールで見ると悪化がわかる
健診結果にnon-HDLコレステロールという項目があれば、そちらも確認してください。総コレステロールからHDL(善玉)を引いた値で、LDLコレステロールに加えて、中性脂肪を多く含むリポタンパク(レムナント)なども合わせた「動脈硬化を進めるコレステロールの総量」を表します。中性脂肪が高い方ではこのレムナントが増えるため、LDLが目標内でもnon-HDLだけが高くなることがあります(目標値はLDLの目標値+30mg/dLが目安です)。
- 170mg/dL以上:高non-HDLコレステロール血症
- 150〜169mg/dL:境界域
中性脂肪が高い方は、LDLが目標内でもnon-HDLが高いことがよくあります。ガイドラインでも「LDLの管理目標を達成してもnon-HDLが高い場合は高TG血症を伴うことが多く、その管理が重要」とされています。
③ 極端に高いと急性膵炎の原因になる
中性脂肪が著しく高い状態は、急性膵炎を起こす原因になることが知られています。急性膵炎は激しい腹痛・背部痛を伴い、入院が必要になる病気です。
とくに1,000mg/dLを超えるような著明な高値では、血液中にカイロミクロンという大きな脂肪粒子があふれ、急性膵炎の危険が高まります。
その手前の水準についても目安があります。厚生労働省の健診プログラムでは中性脂肪500mg/dL以上(空腹時・随時を問わず)を「早期に医療機関の受診を」とし、日本動脈硬化学会も空腹時500mg/dL以上を専門医紹介の検討基準のひとつに挙げています。1,000mg/dLを超える場合は、動脈硬化の予防よりもまず膵炎を防ぐための治療(禁酒・厳格な脂肪制限・薬物療法)が優先されます。
中性脂肪が上がる原因
生活習慣によるもの
- アルコール:中性脂肪を最も上げやすい要因のひとつ。量だけでなく頻度も効きます
- 糖質のとりすぎ:ごはん・パン・麺の食べすぎと、甘い飲み物(清涼飲料、加糖コーヒー、スポーツドリンク)。ごはんを抜く必要はありません。ガイドラインは炭水化物をエネルギーの50〜60%に保ったうえで、その範囲でやや控えめにすることを勧めています
- 果糖:果糖ぶどう糖液糖を含む飲料や加工食品の大量摂取。果物そのものは、糖質の少ないものを適量なら問題ありません
- 肥満・内臓脂肪
- 運動不足
意外に思われるのが糖質です。「脂っこいものは食べていないのに」という方の多くが、実はごはんの量や甘い飲み物が原因になっています。余った糖質は中性脂肪に変換されるためです。
他の病気や薬によるもの(二次性)
生活習慣では説明がつかない場合、別の原因を探します。
- 糖尿病(血糖のコントロールが悪いと中性脂肪も上がります)
- 甲状腺機能低下症
- ネフローゼ症候群などの腎臓の病気、慢性腎臓病
- クッシング症候群などホルモンの病気
- 妊娠(妊娠後期は生理的に中性脂肪が上がります。健診結果に驚かなくて大丈夫です)
- 薬剤性(ステロイド、サイアザイド系利尿薬、β遮断薬、エストロゲン製剤、レチノイド、一部の抗精神病薬、一部の免疫抑制薬など)
- 原発性(遺伝性)の脂質異常症(極端な高値が続く場合)



中性脂肪を下げる方法
中性脂肪には良い知らせがあります。LDLコレステロールに比べて、生活習慣の改善で反応しやすいということです。数週間から数か月で目に見えて下がることも珍しくありません。
① お酒を減らす(効果が最も早い)
飲酒習慣がある方は、ここが最大の伸びしろです。ガイドラインが示す目安は純アルコールで1日25g以下(日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎0.6合、ワイングラス2杯弱ほど)。厚生労働省の飲酒ガイドラインでは、生活習慣病のリスクが高まる量を男性40g/日以上・女性20g/日以上としています。
量を減らしたうえで、飲まない日をつくるとさらに効果的です。毎日飲んでいた方が2週間やめるだけで数値が大きく変わることもあります。なお中性脂肪が著しく高い方や膵炎が心配される方では、いったん禁酒を勧められることがあります。
② 甘い飲み物をやめる
固形の食事を減らすより、飲み物を水・お茶に替えるほうが圧倒的に簡単で、続きます。清涼飲料水1本(500mL)に角砂糖10個分以上の糖分が入っていることも珍しくありません。
③ 魚を増やす
ガイドラインでは、中性脂肪を下げることを目的に、n-3系多価不飽和脂肪酸のうち「魚油」の摂取を増やすことが推奨されています。さば、いわし、さんま、あじなどの青魚が代表で、水煮の缶詰でもかまいません。
注意点として、同じn-3系でもえごま油・亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸では、血清脂質の改善は確認されていません。「n-3系だから」と油を変えるより、魚を食べるほうが確実です。
④ 減量と有酸素運動
体重が3〜5%減るだけでも中性脂肪は下がります。運動は中性脂肪を下げると同時にHDLを上げる方向に働くので、脂質全体のバランスが改善します。



受診の目安
救急受診を(夜間・休日でもためらわない)
- 強い上腹部痛・背部痛に吐き気や嘔吐を伴う(前かがみになると少し楽になるのが典型です) → 急性膵炎の可能性があります。中性脂肪の相談ではなく救急受診を
できるだけ早く受診
- 中性脂肪が1,000mg/dL以上(急性膵炎のリスクが高い水準)
早期に受診
- 中性脂肪が500mg/dL以上(空腹時・随時を問わず)。専門医への紹介が検討される水準でもあります
- non-HDLコレステロールが210mg/dL以上、またはHDLコレステロールが30mg/dL未満
生活習慣を見直したうえで受診
- 中性脂肪が300mg/dL以上(健診で受診勧奨となる水準)
一度は相談を
- お酒を飲まないのに150mg/dL以上が続く
- 糖尿病・腎臓病・甲状腺の病気がある
- 健診でHbA1cや血糖も一緒に高い
- 肘・膝・お尻などに黄色い小さな盛り上がりがある(発疹性黄色腫といい、著明な高中性脂肪血症のサインのことがあります)
よくある質問
Q. 再検査はいつ受ければいいですか?
中性脂肪は変動が大きいため、条件を揃えた再検査に意味があります。10時間以上絶食し、前日はアルコールと脂っこい食事を控えて採血を受けてください。生活習慣の改善に取り組む場合は、3か月ほど続けてから測ると変化がわかりやすくなります。
Q. 中性脂肪が高いと脂肪肝になりますか?
中性脂肪が高い状態と脂肪肝は、背景(内臓脂肪、糖質・アルコールのとりすぎ、インスリン抵抗性)が共通しているため、しばしば同時に見つかります。健診でγ-GTPやALTも一緒に高い場合は、脂肪肝が隠れている可能性があります。
Q. 中性脂肪の薬はありますか?
あります(フィブラート系薬、選択的PPARαモジュレーター、EPA製剤など)。ただし脂質の治療はまずLDLコレステロール、次にnon-HDLコレステロールを目標値まで下げることが基本で、中性脂肪が高い方でもスタチンが選ばれることがあります。「中性脂肪の薬ではないのに」と思われるかもしれませんが、動脈硬化を防ぐという目的からは理にかなった選択です。
一次予防では、まず生活習慣の改善を行ったうえで薬物療法を考えるのが原則です。極端な高値や他のリスクが重なる場合には早期から薬を使うこともあります。判断は主治医とご相談ください。
Q. 痩せているのに中性脂肪が高いのはなぜ?
体型と中性脂肪は必ずしも一致しません。飲酒量が多い方、甘い飲み物や糖質の摂取が多い方、そして遺伝的な体質の方では、痩せていても高値になります。痩せているのに繰り返し高い場合は、一度医療機関で原因を調べることをおすすめします。
まとめ
- 基準は空腹時150以上/随時175以上。採血が空腹時だったか必ず確認する
- 500以上は空腹時・随時を問わず早期受診、1,000以上は急性膵炎のリスク
- LDLが正常でも安心はできない。non-HDLコレステロールも見る
- 原因は脂質よりアルコールと糖質(特に甘い飲み物)であることが多い
- 生活習慣の改善に反応しやすい項目。3〜6か月を目安に体重の3%減を目標にすると数値が変わってくることが多い(体質や別の病気が原因の場合は、それだけでは下がらないこともあります)
参考にした資料
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(2022年7月発行)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」健診検査項目の保健指導判定値および受診勧奨判定値、脂質異常に関するフィードバック文例集
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月)
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。実際の判断は必ず主治医にご相談ください。

