健康診断の結果表に「LDLコレステロール 140 要受診」と印字されていて、手が止まった。そんな方に向けた記事です。
患者さん


この記事では、内科医の立場から「あなたの数値が今どの段階なのか」「何をすればいいのか」「どこからが受診すべきラインなのか」を、日本動脈硬化学会のガイドラインと厚生労働省の判定基準に沿って整理します。
まず結論:あなたの数値はどの段階?
健診結果を手元に置いて、ご自分のLDLコレステロール値がどこに入るか確認してください。
| LDL値(mg/dL) | 位置づけ | まずやること |
|---|---|---|
| 60〜119 | 基準範囲内 | 現状維持。来年も健診を受ける |
| 60未満 | 低すぎる(要確認) | 他の病気や栄養状態が背景にあることがあるため、一度相談を |
| 120〜139 | 保健指導判定値 (境界域高LDLコレステロール血症) | 生活習慣の見直し。他のリスク次第では受診も検討 |
| 140〜179 | 受診勧奨判定値 (高LDLコレステロール血症) | 一度は医療機関を受診する |
| 180以上 | 受診勧奨+ 専門医への紹介も検討される水準 | 早めに受診。家族性の可能性も調べる |
ポイントは、140以上は「関係学会が病気と判断する数値」として受診勧奨の対象になるということです。健診結果に「要受診」「要医療」と書かれていたら、それはこの基準に基づいています。
LDLコレステロールとは?なぜ「悪玉」と呼ばれるのか
まず誤解を解いておきたいのですが、コレステロールそのものは体に必要な物質です。細胞膜の材料であり、ホルモンやビタミンD、胆汁酸のもとにもなります。ゼロにすればいいというものではありません。
LDLは「運ぶ係」、HDLは「回収する係」
コレステロールは水に溶けないため、血液中ではリポタンパクという運搬体に包まれて移動します。
- LDL(悪玉):肝臓でつくられたコレステロールを、全身の細胞へ配達する係
- HDL(善玉):余ったコレステロールを、全身から肝臓へ回収する係
配達係であるLDLが血液中に増えすぎると、余ったLDLが血管の壁の中に入り込みます。そこで酸化を受け、それを処理しようとした免疫細胞ごと壁の中に溜まって、プラーク(粥腫)というコブをつくります。これが動脈硬化です。
症状が出たときには、すでに進んでいる
動脈硬化が怖いのは、血管が細くなっていく過程ではほとんど症状が出ないことです。狭くなってくると、坂道や階段で胸が締めつけられる(狭心症)、歩くとふくらはぎが痛んで休むと治る(足の動脈硬化)といったサインが出ることもありますが、多くの方は無症状のまま進み、プラークが破れて血栓ができ、血管が詰まってはじめて心筋梗塞や脳梗塞という形で現れます。



数値別|あなたが取るべき行動
LDL 120〜139:境界域
すぐに治療が必要な段階ではありませんが、「正常」でもありません。ガイドラインではこの範囲を境界域高LDLコレステロール血症と呼び、「高リスクの病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する」とされています。
つまり、この数値だけで判断せず、以下があるかどうかで意味が変わります。
- 糖尿病がある
- 慢性腎臓病(CKD)がある
- 喫煙している
- 血圧が高い
- 家族に若くして心筋梗塞になった人がいる
これらに当てはまる場合は、120台でも一度相談する価値があります。当てはまらない場合は、まず生活習慣の見直しから始めて、翌年の健診で推移を見ます。
LDL 140〜179:高LDLコレステロール血症
脂質異常症の診断基準を満たす数値です。健診では「受診勧奨」となります。
ただし、この数値イコール、すぐに薬を飲むという意味ではありません。一次予防(まだ心筋梗塞や脳梗塞を起こしていない方)では、まず生活習慣の改善を行ったうえで薬物療法を考える、というのが原則です。詳しくは次の章で説明します。
この段階で医療機関を受診する目的は、薬をもらうことではなく、「自分はどのくらいのリスクなのか」を評価してもらうことです。
LDL 180以上:家族性の可能性も考える
ここは他と扱いが違います。ガイドラインでは、どのリスク区分であっても、LDLが180mg/dL以上の状態が続く場合は、生活習慣の改善とあわせて薬物治療を考慮してよいとされています。一回の測定で即投薬という意味ではなく、再検査で確認したうえでの判断です。また、専門医への紹介を検討する基準のひとつにもなっています。
そしてこの水準では、家族性高コレステロール血症(FH)という遺伝性の病気を考える必要があります。成人(15歳以上)の診断基準は次の3項目です。
- 未治療時のLDLコレステロール値が180mg/dL以上
- 腱黄色腫(手の甲、肘、膝、アキレス腱の肥厚)または皮膚結節性黄色腫
- FHまたは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者=親・子・兄弟姉妹)
このうち2項目以上を満たすとFHと診断されます。早発性冠動脈疾患とは、男性55歳未満、女性65歳未満で発症した狭心症・心筋梗塞のことです。
なお2項目に届かない場合でも、未治療のLDLが250mg/dL以上のとき、または腱黄色腫か家族歴のどちらかがあってLDLが160mg/dL以上のときは、FHを強く疑って精査を行うことになっています。自己判断せず、医療機関で評価を受けてください。
また、診断基準の家族歴は第一度近親者(親・子・きょうだい)を指しますが、祖父母やおじ・おばに若くして心筋梗塞になった方がいる場合も、診察時には必ず伝えてください。診断基準の項目には入らなくても、リスクを判断する重要な情報になります。






ご自宅でできるチェックとして、アキレス腱を指でつまんでみるという方法があります。明らかに太く硬い場合は受診時に伝えてください(正式にはX線や超音波で厚みを測定します)。
「140以上ならすぐ薬」ではない理由
ここが、健診結果を受け取った方に一番知っておいてほしいところです。
現在のガイドラインでは、LDLの目標値は全員同じではありません。その人が今後10年間で心筋梗塞や脳梗塞を起こす確率(絶対リスク)を推計し、リスクの高さに応じて目標値を変えます。
| 区分 | LDLの管理目標値 |
|---|---|
| 一次予防・低リスク | 160mg/dL未満 |
| 一次予防・中リスク | 140mg/dL未満 |
| 一次予防・高リスク | 120mg/dL未満 (糖尿病があり、かつ末梢動脈疾患・網膜症・腎症・神経障害のいずれかを合併している場合、または喫煙している場合は100mg/dL未満) |
| 二次予防 (冠動脈疾患=心筋梗塞・狭心症、カテーテル治療やバイパス手術を受けた方、およびアテローム血栓性脳梗塞の既往) | 100mg/dL未満 (急性冠症候群・家族性高コレステロール血症・糖尿病・冠動脈疾患と脳梗塞の合併のいずれかがある場合は70mg/dL未満) |
同じ「LDL 150」でも、たばこを吸う血圧高めの男性と、リスク因子のない女性とでは、意味がまったく違うということです。
リスクは6つの項目で計算する
2022年版では、福岡県久山町の住民を長年追跡した研究(久山町研究)のスコアを使ってリスクを計算します。使う項目は次の6つです。
- 性別
- 収縮期血圧(上の血圧)
- 糖代謝異常の有無
- LDLコレステロール値
- HDLコレステロール値
- 喫煙の有無
これに年齢を組み合わせて、今後10年間の発症確率を出します。2%未満なら低リスク、2〜10%未満で中リスク、10%以上で高リスクです。
ひとつ注意点があります。この計算表が使えるのは40〜79歳です。40歳未満では10年間のリスクがどうしても低く出てしまうため、この表で「低リスク」と自己判定しないでください。若い方は「このまま年齢を重ねたらどうなるか」という視点で主治医と相談します。80歳以上も体の状態の個人差が大きいため、表をそのまま当てはめません。
なお、すでに冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症、カテーテル治療やバイパス手術を受けた方を含みます)やアテローム血栓性脳梗塞を起こしたことがある方は二次予防として別扱いになり、糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患のいずれかがある方は、スコアを計算するまでもなく高リスクに分類されます。



他の病気が原因のこともある(二次性脂質異常症)
LDLが高い原因は、食事や運動不足だけとは限りません。別の病気や薬の影響でコレステロールが上がっているケースがあり、これを二次性(続発性)脂質異常症と呼びます。
- 甲状腺機能低下症(疲れやすさ、むくみ、寒がり、体重増加を伴うことが多い)
- ネフローゼ症候群などの腎臓の病気
- 原発性胆汁性胆管炎などの肝・胆道の病気
- 糖尿病
- 薬剤性(ステロイド、一部の免疫抑制薬、利尿薬など)
- 閉経(女性ホルモンの減少でLDLが上がりやすくなります)
これらが原因の場合、もとの病気を治療することが優先になります。コレステロールの薬だけ飲んでも根本解決にならないためです。医療機関では、こうした原因を探す採血もあわせて行います。






生活習慣でLDLを下げる:根拠のある方法
「とにかく脂っこいものを控える」という漠然とした方針より、数字で狙いを定めたほうが効果が出ます。ガイドラインが推奨している具体的な目標は次のとおりです。
① 飽和脂肪酸を総エネルギーの4.5%以上7%未満に
LDLを上げる最大の食事要因は、コレステロールそのものより飽和脂肪酸です。具体的には以下に多く含まれます。
- 肉の脂身、ばら肉、鶏皮、ひき肉
- バター、生クリーム、チーズ、全脂乳
- 菓子パン、クッキー、チョコレート、アイスクリーム
- カップ麺、揚げ物
置き換えの例:牛豚のばら肉→鶏むね肉・魚、バター→植物油(オリーブ油・菜種油)、間食の洋菓子→ナッツや果物。
ただしゼロを目指すものではありません。極端に減らすと脳出血が増える可能性が指摘されており、下限の目安として4.5%以上とされています。「減らす」であって「抜く」ではない、と覚えてください。
② コレステロール摂取を1日200mg未満に(LDLが高い方)
健康な人全員に必要な制限ではありませんが、すでに高LDLコレステロール血症と言われた方には、1日200mg未満への制限が推奨されています。鶏卵1個(Mサイズ)に含まれるコレステロールはおよそ185〜200mgです。これだけで1日の枠をほぼ使い切ってしまい、他の食品にもコレステロールは含まれるため、卵は1日1個までを上限に、実際には1個未満が目安ということになります。
他に多いのは、いくら・たらこなどの魚卵、レバー、うなぎ、しらすです。
③ 食物繊維を1日25g以上に
食物繊維は腸でコレステロールや胆汁酸を吸着して排泄させます。ガイドラインではおおむね25g/日以上が勧められています。日本人の平均摂取量は18〜20g前後(令和元年国民健康・栄養調査:20歳以上で男性19.9g、女性18.0g)なので、あと5〜7gを意識して増やすイメージです。
増やしやすいのは、野菜、海藻、きのこ、大豆製品、そして白米を麦ごはんや玄米に替える方法です。主食を替えるのは、一度決めれば毎日自動的に続くので続きやすい方法です。
④ 減量・運動・禁煙
体重を減らすとLDLも下がります。運動は特にHDLを上げ、中性脂肪を下げる効果が期待できます。そして禁煙は、LDLの数値そのものより、リスク区分を大きく下げるという意味で効果が絶大です。前述のスコアで喫煙は2点です。収縮期血圧は10mmHgごとに区切って点数がつくので、吸っているだけで血圧が2ランク(おおよそ10〜20mmHg)高い人と同じ重みになります。



受診の目安|このラインを超えたら医療機関へ
判断に迷ったら、次のいずれかに当てはまるかを確認してください。
- LDLコレステロールが140mg/dL以上(健診で受診勧奨となる水準)
- 中性脂肪が300mg/dL以上(空腹時・食後を問わず。健診で受診勧奨となる水準)
- 親・きょうだいに、若くして(男性55歳未満・女性65歳未満)心筋梗塞や狭心症になった人がいる
- 糖尿病・慢性腎臓病があり、LDLが120mg/dL以上
次の4つは、日本動脈硬化学会が専門医への紹介を検討する基準として挙げている項目です。
- LDLが180mg/dL以上
- HDLコレステロールが30mg/dL未満
- 空腹時の中性脂肪が500mg/dL以上(食後の採血でも500以上なら早期受診の対象です)
- non-HDLコレステロールが210mg/dL以上
このほか、遺伝性の脂質異常症が疑われる場合や、他の病気が原因と疑われる場合も紹介の対象です。とはいえ、かかりつけ医がいる場合はまずそちらで問題ありません。
なお、次の症状は救急疾患のサインです。コレステロールの相談を待たずに対応してください。
- 突然、片側の手足の力が入らない/顔の片側がゆがむ/ろれつが回らない・言葉が出ない → 迷わず119番。脳梗塞の可能性があります。詰まった血管を開ける治療は発症からの時間で適応が決まるため、一刻を争います。症状がいったん消えても受診が必要です
- 胸の痛み・締めつけ感・圧迫感が数分以上続く、冷や汗や吐き気を伴う → 迷わず119番。心筋梗塞の可能性があります
- 坂道や階段で胸が締めつけられる・息が切れるが、休むとおさまる → 狭心症の可能性があります。救急ではありませんが、当日から数日以内に循環器内科を受診してください
よくある質問
Q. 健診の前に食事を抜きませんでした。結果は信用できますか?
LDLコレステロールとHDLコレステロールは、食後(随時)の採血でも大きくは変動しにくく、健診では直接測定した値でそのまま判定するのが原則です。ただし中性脂肪が高いときや、LDLを計算式で求めている場合は食事の影響を受けるため、10時間以上絶食しての再検査や、non-HDLコレステロールでの評価が行われます。
一方、中性脂肪は空腹時と食後で基準が変わります(空腹時150mg/dL以上、随時175mg/dL以上が高値)。
Q. 卵は1日1個までと聞きましたが本当ですか?
「全員が1日1個まで」ではありません。制限が推奨されるのはすでにLDLが高いと指摘された方で、その場合は食事全体のコレステロールを1日200mg未満に抑えます。卵1個でほぼその枠を使い切るため、結果的に「1日1個未満」となります。LDLが正常な方に一律の制限は必要ありません。
Q. コレステロールの薬は一度飲んだら一生ですか?
一次予防で、生活習慣の改善によって目標値を達成できれば、減量・中止を検討することはあります。ただし薬をやめれば数値は戻ることが多く、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こした方(二次予防)では、継続が原則です。自己判断での中止は避けて、必ず主治医と相談してください。
Q. 生活習慣を変えれば、どのくらい下がりますか?
個人差が非常に大きい部分です。ガイドラインでは一次予防の低・中リスクの方について「LDLを20〜30%下げる」ことも目標になりうるとされていますが、これはスタチンという薬を使った臨床試験のデータをもとにした目標設定で、生活習慣の改善だけでこの幅が出るという意味ではありません。
食事と体重の見直しでLDLがどこまで下がるかは人によって差が大きく、十分に下がる方もいれば、しっかり取り組んでもあまり動かない方もいます。これは体質の影響が大きいためで、努力不足ではありません。まずは3か月取り組んで再検査し、そこで薬の必要性を含めて判断する、という進め方が一般的です。
まとめ
- LDL 140以上は受診勧奨の水準。まずは一度、評価を受ける
- 180以上は別格。薬物治療の検討に加え、家族性高コレステロール血症(約300人に1人)の可能性を調べる
- 目標値は全員同じではない。年齢・性別・血圧・血糖・LDL・HDL・喫煙で決まる(計算表が使えるのは40〜79歳)
- 急に上がったときは、甲状腺などの他の病気や薬の影響を疑う
- 食事で狙うのは飽和脂肪酸7%未満・コレステロール200mg未満・食物繊維25g以上
健診結果は、症状が出る前の体を見せてくれる数少ない手がかりです。数字に驚いた今が、いちばん動きやすいタイミングでもあります。



参考にした資料
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(2022年7月発行)
- 日本動脈硬化学会「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022年版」
- 日本動脈硬化学会「ASCVD患者の脂質管理に関するコンセンサス・オピニオン」(2025年12月)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別紙5 健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値
- 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。実際の判断は必ず主治医にご相談ください。

