「尿酸値が高い」と言われたことはありますか?痛風発作は突然の激痛で有名ですが、実は適切な管理で予防できます。リウマチ内科専攻医がわかりやすく解説します。
患者さん足の親指が突然ズキズキ痛くなりました。痛風ですか?



急な足指(特に親指付け根)の激痛は痛風発作の典型的な症状です。尿酸値の検査と専門医への受診をおすすめします。
目次
痛風・高尿酸血症とは?
痛風は、血液中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」により、関節に尿酸塩の結晶(尿酸ナトリウム結晶)が沈着して起こる炎症性関節炎です。尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を高尿酸血症といいます。日本では成人男性の約20〜30%が高尿酸血症とされており、近年増加傾向にあります。
尿酸はどこから来るの?
尿酸はプリン体が分解されてできる代謝産物です。プリン体は食事(肉・魚・ビールなど)からとるほか、体内でも細胞の代謝により産生されます。尿酸の約70%は腎臓から尿に排泄されます。
痛風発作の症状



どのくらい痛いんですか?



「風が吹いただけで痛い」というのが病名の由来です。足の親指の付け根が最も多く、突然始まり24〜48時間でピークに達します。
- 好発部位:足の親指の付け根(第1中足趾節関節)が最多で、足首・膝・手首にも起こることがあります
- 発症のタイミング:深夜〜早朝に突然始まることが多いです
- 痛みの性質:激烈な疼痛・腫脹・発赤・熱感を伴い、歩行困難になることもあります
- 経過:治療しなくても1〜2週間で自然に軽快しますが、再発を繰り返すことが多いです
- 痛風結節:尿酸塩結晶が皮下に蓄積した塊で、耳介・肘・アキレス腱周囲に出現することがあります
診断の方法
痛風の診断は症状・尿酸値・関節液検査・画像検査を組み合わせて行います。
- 血清尿酸値:7.0mg/dL超で高尿酸血症と診断されます。ただし発作中は正常値になることもあります
- 関節液検査:針状の尿酸ナトリウム結晶を偏光顕微鏡で確認します(確定診断)
- 関節エコー・DECT(二重エネルギーCT):尿酸塩沈着を可視化できます
- 2015年ACR/EULAR痛風分類基準:尿酸値・臨床症状・画像所見などをスコアリングして診断を補助する国際基準です
痛風・高尿酸血症の治療



薬を飲み続けないといけませんか?



発作の治療と、再発予防のための尿酸値管理の2段階です。尿酸値をコントロールすれば発作を防ぐことができます。
① 急性発作の治療
- コルヒチン:発作早期(特に前兆期〜発症後できるだけ早い時期)の使用が効果的とされます。ただしコルヒチンは医師が処方する薬であり、用法・用量は必ず医師の指示に従って使用してください。自己判断での服用量変更は重篤な副作用(骨髄抑制など)のリスクがあり危険です。また、妊婦または妊娠の可能性がある方には禁忌です
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):インドメタシンなど。腎機能が低下している方(慢性腎臓病など)は腎機能をさらに悪化させるリスクがあるため、使用前に必ず医師・薬剤師に相談してください
- ステロイド:NSAIDs・コルヒチンが使用できない場合に使用
⚠️ 発作中に尿酸降下薬を新たに開始・増量すると発作が遷延・悪化することがあります。発作が完全に落ち着いてから開始するのが原則です。ただし、すでに尿酸降下薬を服用中の方は自己判断で中断せず、必ず医師に相談してください。
② 尿酸降下療法(再発予防)
痛風発作の再発予防には、尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することが目標です(痛風結節がある場合は5.0mg/dL以下)。
- アロプリノール(ザイロリック®):尿酸産生抑制薬。最も古くから使用。腎機能が低下している方は薬が体内に蓄積しやすく、重篤な薬剤性過敏症症候群(DRESS症候群:発疹・発熱・臓器障害)のリスクが高まるため、医師が腎機能に応じて投与量を調整します。発疹・発熱が現れた場合はすぐに受診してください。自己判断で量を変えないでください
- フェブキソスタット(フェブリク®):選択的XO阻害薬。腎機能低下例にも使いやすい。ただしメルカプトプリン・アザチオプリン服用中の方には禁忌。また海外試験で心血管疾患を有する患者での心血管死リスクがアロプリノールより高かったとの報告があり、心血管疾患がある方への投与は慎重に判断が必要です
- ベンズブロマロン(ユリノーム®):尿酸排泄促進薬。尿酸排泄低下型に有効。腎結石を伴う方・肝障害のある方・高度の腎機能障害・妊婦は禁忌。また投与開始後6ヵ月以内に劇症肝炎など重篤な肝障害(死亡例あり)が報告されており、投与開始後少なくとも6ヵ月間は3ヵ月に1回以上の定期的な肝機能検査が必要です。尿酸排泄増加に伴う尿路結石予防のため、水分摂取と尿のアルカリ化(ウラリットなど)も行います
- ドチヌラド(ユリス®):新しい尿酸排泄促進薬(2020年承認)
食事・生活習慣の改善



食事で気をつけることはありますか?



プリン体の多い食品を控えめにすること、水分をしっかりとること、アルコール(特にビール)を減らすことが大切です。ただし薬なしで尿酸値を正常化するのは難しいので、食事と薬を組み合わせます。
- プリン体が多い食品を控える:レバー・白子・干物・鶏モツ・ビール(特に多い)など
- アルコールを控える:アルコール全般が尿酸値を上げます。ビールは特にプリン体も多いため注意が必要です
- 水分を十分にとる:尿量を増やして尿酸排泄を促す。1日2L以上が目安
- 肥満の改善:肥満は尿酸値上昇の重要なリスク因子です。ただし急激なダイエットは逆に発作を誘発することがあるため注意が必要です
- 果糖(フルクトース)を控える:清涼飲料水・果物の過剰摂取は尿酸値を上げます
- 乳製品:低脂肪乳製品は尿酸値を下げる効果が複数の研究で報告されており、意識的にとることを検討してよい
放置するとどうなる?合併症
- 痛風腎・慢性腎臓病:高尿酸血症が持続すると腎機能障害が進行します
- 尿路結石:尿酸結石・シュウ酸カルシウム結石のリスクが上昇します
- 心血管疾患:高尿酸血症は高血圧・心筋梗塞・脳卒中のリスク因子となります
- メタボリックシンドローム:高尿酸血症は糖尿病・脂質異常症・高血圧としばしば合併します
高尿酸血症・痛風は単なる関節の病気ではなく、腎臓や心臓にも影響を及ぼします。自覚症状がなくても定期的な血液・尿検査を受け、腎機能や心血管リスクを医師と一緒に管理することが重要です。
まとめ
- 痛風は尿酸値が高くなることで関節に尿酸塩結晶が沈着して起こる炎症性関節炎です
- 足の親指付け根の突然の激痛が典型的で、深夜〜早朝に多くみられます
- 発作の治療(コルヒチン・NSAIDs)と再発予防(尿酸降下薬)は分けて考えることが大切です
- 発作中は尿酸降下薬を新たに開始しないことが原則です(発作が遷延するため)
- 尿酸値6.0mg/dL以下を維持することが再発予防の目標です
- 食事改善(プリン体・アルコール制限)+水分摂取+薬物療法を組み合わせて管理します
- 放置すると腎機能障害・心血管疾患リスクが上昇するため、継続的な管理が重要です
