「コレステロールが高いと言われた」「ステロイドを飲んでいると脂質が上がるの?」——リウマチ・膠原病の患者さんでよく聞かれる疑問です。
この記事では、リウマチ内科専攻医がステロイドや生物学的製剤が脂質に与える影響と、心血管リスク管理のポイントを解説します。
患者さん


脂質異常症の診断基準(JAS2022)
日本動脈硬化学会ガイドライン(JAS2022)による診断基準です。
| 病型 | 基準値 |
|---|---|
| 高LDLコレステロール血症 | LDL ≥140 mg/dL |
| 低HDLコレステロール血症 | HDL <40 mg/dL |
| 高トリグリセリド(TG)血症(空腹時) | TG ≥150 mg/dL |
| 高トリグリセリド(TG)血症(随時) | TG ≥175 mg/dL(JAS2022新追加) |
| 高non-HDLコレステロール血症 | non-HDL ≥170 mg/dL |
ステロイドと脂質異常症
グルコルチコイド(プレドニゾロンなど)は脂質代謝を大きく変化させます。用量・使用期間に依存して影響が出ます(プレドニゾロン7.5mg/日以上で特にリスクが高まる)。
| 脂質 | ステロイドの影響 |
|---|---|
| LDLコレステロール | 上昇(肝での脂質合成亢進) |
| トリグリセリド(TG) | 上昇(肝VLDLの合成増加) |
| 総コレステロール | 上昇 |
| HDLコレステロール | 数値は軽度上昇または不変のことも |
生物学的製剤・免疫抑制薬の脂質への影響
トシリズマブ(IL-6阻害薬)
トシリズマブはLDL・TG・HDLをいずれも上昇させます。
| 脂質 | 変化 |
|---|---|
| LDLコレステロール | 約15〜22%上昇 |
| トリグリセリド(TG) | 約15〜48%上昇 |
| HDLコレステロール | 約5〜17%上昇 |
JAK阻害薬(トファシチニブ・バリシチニブ・ウパダシチニブ)
JAK阻害薬もLDL・HDLを上昇させます(LDL約10〜15%上昇)。投与開始後の定期的な脂質モニタリングが推奨されます。
TNF阻害薬(エタネルセプト・アダリムマブなど)
TNF阻害薬の脂質への影響は研究間でばらつきがあります。炎症制御を介してHDL機能が改善する可能性が報告されていますが、LDL・総コレステロールへの影響は上昇・低下・変化なしと一定しません。疾患活動性の改善に伴う脂質変化(lipid paradox)も影響します。
シクロスポリン
シクロスポリンはLDL・TGを上昇させます。また、スタチンとの相互作用に注意が必要です。
禁忌:ピタバスタチン(リバロ®)・ロスバスタチン(クレストール®)→横紋筋融解症リスク
併用注意:プラバスタチン・フルバスタチンは比較的安全とされるが、それでも血中濃度上昇の報告あり。定期的な筋症状・CK値チェックが必要。
※フィブラートとシクロスポリンの併用も腎毒性リスクあり。
SLE患者の心血管リスク管理
SLE患者の心血管疾患リスクは一般人口の約2〜2.5倍(大規模メタアナリシスによる、RR≒2.35)です。若年女性では心筋梗塞リスクがより高い報告もあります。
リスクが高い理由は脂質異常だけでなく、慢性炎症・抗リン脂質抗体・腎機能障害・ステロイド使用など複合的な要因があります。
ヒドロキシクロロキン(プラケニル®)の脂質改善効果
SLE・RAで使用されるヒドロキシクロロキン(HCQ)にはLDLコレステロールを平均約24 mg/dL低下させるエビデンスがあります(メタアナリシス)。ステロイドによる脂質悪化を一部相殺する効果が期待されます。
RAのlipid paradoxとは?
RA患者ではLDLが低い(炎症でLDL合成が抑制される)にもかかわらず、心血管疾患リスクが高いという逆説現象が知られています。これをlipid paradoxといいます。
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まとめ
| 薬剤・疾患 | 脂質への影響 | 対応 |
|---|---|---|
| ステロイド | LDL・TG上昇(HDL機能低下) | スタチン、最小有効量を追求 |
| トシリズマブ | LDL・TG・HDL全て上昇 | 定期モニタリング・スタチン |
| JAK阻害薬 | LDL・HDL上昇 | 定期モニタリング |
| シクロスポリン | LDL・TG上昇 | ピタバスタチン・ロスバスタチンは禁忌 |
| HCQ(プラケニル) | LDL低下効果あり | SLE・RAで積極的に使用 |







