「リウマチになったら仕事を辞めなければいけないの?」「職場にどこまで伝えるべき?」——そんな不安を抱える関節リウマチ患者さんは少なくありません。この記事では、関節リウマチを抱えながら仕事を続けるためのポイントを、リウマチ内科専攻医がわかりやすく解説します。
患者さん


関節リウマチと就労の現状
どれくらいの患者さんが働き続けているの?
関節リウマチ(RA)は20〜50代の働き盛りの世代にも多く発症します。かつては「リウマチ=仕事を辞める病気」というイメージがありましたが、現在は生物学的製剤やJAK阻害薬などの治療の進歩により、就労継続率は大きく改善しています。
国内外の研究では、RA患者の就労継続率は研究や測定時点・治療法によって大きく異なりますが、早期に治療を開始し疾患活動性を低く保つことで就労継続率が改善することが示されています。生物学的製剤やJAK阻害薬の登場以降、働き続けられる患者さんは増加しています。
仕事に影響する主な症状
- 朝のこわばり:起床後1〜2時間、手指や関節が動かしにくい
- 関節痛・腫脹:特に手指・手首・肩・膝などへの影響
- 疲労感:炎症性サイトカインによる全身倦怠感
- 薬の副作用:MTXによる悪心、免疫抑制による感染リスク
仕事を続けるための3つの柱
①疾患活動性のコントロール
最も重要なのは、疾患活動性を低く抑えることです。DAS28などの活動性指標を低疾患活動性〜寛解に維持することで、関節破壊の進行を防ぎ、就労能力を保持できます。
「仕事が忙しいから受診できない」という悪循環に陥らないよう、定期受診と薬の継続が就労継続の基盤です。
②関節保護・セルフケア
日常業務での関節への負担を減らす工夫が大切です。
- 補助具の活用:太軸ペン・キーボード用リストレスト・ジャーオープナーなど
- 姿勢の工夫:同一姿勢を長時間続けない、適宜ストレッチ
- 重いものを持たない:荷物はカートやキャリーを活用
- 朝のこわばり対策:出勤前に少し余裕を持った時間設定
③職場環境の整備
職場の理解・協力を得ることが就労継続に直結します。主治医から診断書・意見書を作成してもらい、産業医・人事部門と相談することで、以下のような配慮を求められます。
- フレックスタイム・時差出勤(朝のこわばりへの対応)
- 在宅勤務・テレワークの活用
- 座席環境の調整(立ち仕事の軽減など)
- 定期受診のための通院配慮
職場への伝え方






伝える・伝えないのメリット・デメリット
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 伝える | 合理的配慮を求められる、理解が得やすい | 偏見・昇進への影響が不安 |
| 伝えない | プライバシーが守られる | 無理をして悪化するリスク |
伝える場合のポイント
- 「難治性の慢性炎症疾患」として説明する
- 具体的に「何が困難で、何があれば働ける」を伝える
- 主治医の意見書・診断書を活用する
- まず直属の上司か産業医に相談する
利用できる制度・サポート
障害者手帳(身体障害者手帳)
関節リウマチによる関節機能障害が一定程度以上の場合、身体障害者手帳(肢体不自由)の取得が可能です。手帳を取得すると、以下のメリットがあります。
- 障害者雇用枠での就労が可能になる
- 税制優遇(所得税・住民税の控除)
- 交通機関の割引
- 各種サービスの利用
障害年金
関節リウマチが重症で就労が著しく困難な場合、障害厚生年金・障害基礎年金の申請ができます。申請には主治医による診断書が必要です。年金事務所または社会保険労務士に相談することをお勧めします。
就労継続支援・ハローワーク
障害者向けのハローワーク(専門援助部門)では、障害のある方の就職・転職・職場定着を支援しています。また、就労移行支援事業所では、職業訓練・就職活動のサポートを受けられます。
高額療養費制度・指定難病医療費助成
悪性関節リウマチ(血管炎などの関節外症状・内臓障害を伴う重症例)は指定難病(No.46)に該当し、医療費助成を受けられる場合があります。関節病変のみで内臓障害がない場合は対象外となります。詳しくは指定難病の医療費助成制度ガイドをご参照ください。
仕事上の実践的な工夫
朝のこわばりへの対応
朝のこわばりは起床後1〜2時間で改善することが多いです。可能であればフレックス勤務・時差出勤を活用し、無理のない出勤時間を設定しましょう。また、起床後すぐに温かいシャワーを浴びると関節のこわばりが和らぎやすくなります。
デスクワークの工夫
- キーボード・マウス操作:リストレストを活用して手首への負担を軽減
- 書き物:太軸ペンやペングリップを使用
- 長時間同一姿勢を避け、1〜2時間ごとに軽いストレッチ
- 椅子の高さ・アームレストを調整して関節への負担を最小化
外回り・立ち仕事の工夫
- 歩きやすいクッション性の高い靴を選ぶ
- 荷物はリュックやキャリーカートを活用
- 長距離移動は公共交通機関を優先
- 休憩をこまめに取る
薬の管理と仕事
生物学的製剤の自己注射は薬剤により投与間隔が異なります(週1回・2週ごと・4週ごとなど)。仕事のスケジュールに合わせて曜日を調整できます。またJAK阻害薬(バリシチニブ・ウパダシチニブ等)は毎日内服する経口薬で、注射は不要です。MTXは週1回内服の薬で、翌日に悪心が出やすい方は週末に服用するなど工夫しましょう。葉酸(フォリアミン)の併用でMTXの副作用が約40%軽減されることが知られており、多くの場合MTXと一緒に処方されます。
リウマチで使える診断書・もらい方
休職・復職・障害年金・難病医療費助成など、リウマチでは様々な場面で診断書が必要になります。場面ごとに必要な診断書の種類・依頼先・費用感を整理しました。
場面別に必要な診断書
- 休職・復職時の診断書:勤務先所定の様式を主治医に渡して記載依頼。記載項目は病名・休養が必要な期間・配慮事項など。費用は3,000〜5,000円程度(医療機関により異なります)。
- 傷病手当金の意見書:協会けんぽ/健保組合の所定様式。療養のため就労不能であることを医師が記載します。
- 障害年金の診断書:日本年金機構の専用様式(肢体の障害用など)。関節可動域・筋力・日常生活動作の制限を詳細に記載。費用は5,000〜10,000円程度のことが多いです。
- 難病医療費助成の臨床調査個人票:難病指定医が記載。指定難病に該当するSLE・強皮症・ベーチェット病等で必要です(関節リウマチは現時点で指定難病ではありません)。
- 身体障害者手帳の診断書:身体障害者福祉法指定医が記載。下肢の機能障害として認定されることがあります。
診断書をスムーズにもらうコツ
診断書はその場で発行されることは稀で、依頼から1〜2週間かかるのが一般的です。受診時に「次回までに診断書をお願いします」と伝え、所定様式があれば必ず持参しましょう。記載してほしい配慮事項(例:重量物制限、夜勤免除、通院日の確保)は事前にメモにして渡すと、伝え漏れがなくスムーズです。






まとめ:関節リウマチと上手に付き合いながら働くために
- ✅ 早期診断・早期治療で就労継続率は大きく改善している
- ✅ 疾患活動性のコントロールが仕事を続ける最大の基盤
- ✅ 職場への適切な配慮要請・補助具活用で負担を軽減
- ✅ 障害者手帳・障害年金・指定難病制度など使える制度を把握する
- ✅ 一人で抱え込まず、主治医・産業医・社会保険労務士と相談を







