膠原病は皮膚に様々な症状を引き起こします。「顔が赤い」「手の指が白くなる」「皮膚が硬くなってきた」——そのような症状が膠原病のサインである場合があります。この記事では、代表的な膠原病の皮膚症状と、その見分け方・対処法をリウマチ内科専攻医が解説します。
患者さん


SLE(全身性エリテマトーデス)の皮膚症状
蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)
SLEの最も特徴的な皮膚症状で、両頬から鼻にかけて蝶が羽を広げたような形の紅斑が出現します。日光(紫外線)に反応して悪化することが多く、発熱や全身症状を伴うことがあります。
- 鼻唇溝(ほうれい線部分)には及ばないことが特徴
- 光線過敏性(日光で悪化)を伴うことが多い
- SLE分類基準(SLICC/EULAR/ACR)にも含まれる重要な所見
円板状ループス(DLE)
顔・頭皮・耳介などに生じる境界明瞭な円形〜楕円形の紅斑で、中心が萎縮・色素沈着・瘢痕化します。頭皮に生じると瘢痕性脱毛の原因になります。DLEはSLEに合併することもありますが、全身症状を伴わない独立した皮膚疾患として存在することの方が多く(DLE患者の約25〜30%のみSLEを伴う)、「SLEの一型」ではなく独立した疾患単位として捉えることが正確です。
光線過敏症
SLE患者の約60〜80%に光線過敏性がみられます(研究によって50〜83%と幅があります)。紫外線に露出した部位(顔・腕・胸など)に紅斑・発疹が出現し、全身症状(発熱・倦怠感)の悪化を招くことがあります。
脱毛
SLEでは疾患活動性が高い時期にびまん性(全体的)の脱毛が起こることがあります。前髪の生え際がもろくなる「ループス毛」も特徴的です。治療により活動性が低下すると改善することが多いです。
口腔粘膜潰瘍
口の中や鼻粘膜に痛みを伴わないことが多い潰瘍が生じます。SLE分類基準にも含まれる重要な所見です。
全身性強皮症(SSc)の皮膚症状
皮膚硬化
強皮症の最も特徴的な症状で、皮膚がコラーゲンの過剰産生により硬くなる変化です。手指・手・前腕から始まり、重症例では体幹・顔面にまで広がります。
- 限局皮膚硬化型(lcSSc):手指〜前腕・顔面に限局
- びまん皮膚硬化型(dcSSc):体幹にも広がる、内臓病変リスクが高い
レイノー現象
寒冷や精神的ストレスで手指の血管が過剰に収縮し、白→紫→赤と色が変化する現象です。強皮症患者の95%以上に認められ、多くの場合、他の症状より先に出現します。詳しくはレイノー現象の記事をご参照ください。
手指潰瘍・壊疽
レイノー現象が重症化すると、指先に難治性の潰瘍が形成されることがあります。ボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)などが予防・治療に用いられます。
石灰沈着(カルシノーシス)
皮下組織にカルシウムが沈着し、硬いしこりとして触れることがあります。CREST症候群(lcSSc)の特徴的な所見です。
毛細血管拡張症
顔・手・口唇などに小さな赤い点状の血管拡張が出現します。強皮症(特にlcSSc)の特徴的な所見の一つです。
皮膚筋炎(DM)の皮膚症状
ヘリオトロープ疹
眼瞼(まぶた)周囲の紫紅色の浮腫性紅斑で、片側または両側に出現します。名前はヘリオトロープ(花)の紫色から。皮膚筋炎の特異的所見です。
ゴットロン徴候・ゴットロン丘疹
指関節・四肢関節の背側(伸側)に出現する紅斑・丘疹です。MCP関節・PIP関節だけでなく肘・膝・足関節にも出現します。ゴットロン徴候は平坦な紅斑、ゴットロン丘疹は隆起した丘疹を指します。いずれも皮膚筋炎の特異的所見です。
メカニックスハンド
手指の側面・指先に亀裂・粗造化・過角化が生じ、工場労働者の手のようになる所見です。抗ARS抗体陽性の皮膚筋炎(抗合成酵素症候群)に特徴的で、間質性肺疾患の合併と関連します。
V徴候・ショール徴候
- Vネック徴候:胸の前面(デコルテ・Vネック部分)のV字型の紅斑
- ショール徴候:肩・後頸部・上背部のショール(肩掛け)状の紅斑
関節リウマチ(RA)の皮膚症状
リウマトイド結節
肘関節伸側・手指・後頭部などの圧迫を受けやすい部位に生じる皮下結節です。RA患者の約20〜30%に出現し、RF(リウマトイド因子)陽性患者に多くみられます。通常は無症状ですが、感染や潰瘍化することがあります。
リウマトイド血管炎
長期・重症のRAでまれに生じる合併症で、下肢の潰瘍・壊疽・網状皮斑・爪周囲梗塞などが出現します。悪性関節リウマチの診断に関連します。
ベーチェット病の皮膚・粘膜症状
口腔アフタ性潰瘍
ベーチェット病の主症状で、口の中に繰り返し出現する痛みを伴う潰瘍です。「繰り返す(反復性)」ことが診断基準の主症状として求められており、日本の診断基準では12ヶ月以内に3回以上の再発が参考とされています。
外陰部潰瘍・皮膚病変
外陰部(陰茎・陰嚢・外陰)への潰瘍、結節性紅斑様病変、偽性毛包炎(にきびに似た皮疹)などが生じます。針反応(prick試験)はベーチェット病の補助的参考所見として知られますが、日本人での陽性率は約40%程度にとどまります。日本の診断基準では診断の正式な構成要素(主症状・副症状)ではなく、あくまでも参考所見として位置づけられています。
皮膚症状への日常的な対処法
日光・紫外線対策(SLE・皮膚筋炎)
- 日焼け止め:SPF30以上・PA++++ 推奨を毎日使用(曇りの日も)
- 外出時:長袖・帽子・日傘で遮光
- 窓ガラス越しの紫外線にも注意(UVカットフィルム)
保湿・スキンケア(強皮症・全般)
- 皮膚硬化・乾燥に対しては保湿剤(ヘパリン類似物質・ワセリンなど)を毎日塗布
- 入浴後すぐに保湿するのが効果的
- 爪・指先のケアを丁寧に
レイノー現象への対策(強皮症)
- 寒冷を避ける:手袋・カイロ・重ね着
- 急激な温度変化を避ける
- 禁煙(血管収縮を増悪させる)
皮膚症状と治療
主な治療薬
- ヒドロキシクロロキン(HCQ):SLEの皮膚症状・光線過敏に有効。日本でも「プラケニル」として使用可能
- ステロイド外用薬・内服薬:炎症性皮膚病変の主力治療
- タクロリムス外用薬:顔面など皮膚萎縮が問題になる部位に有用
- カルシニューリン阻害薬・免疫抑制薬:重症例に
まとめ:膠原病の皮膚症状のポイント
- ✅ 蝶形紅斑はSLEの代表的サイン。日光で悪化するため遮光が重要
- ✅ 皮膚硬化・レイノー現象は強皮症の特徴。保温・保湿が基本ケア
- ✅ ヘリオトロープ疹・ゴットロン徴候は皮膚筋炎の特異的所見
- ✅ リウマトイド結節はRA患者の約20〜30%に出現
- ✅ 皮膚症状は膠原病の診断・活動性評価の重要な手がかり
- ✅ 日焼け止め・保湿・保温などの日常ケアが症状管理に役立つ







