「血管に炎症が起きる」と聞いてもイメージしにくいですよね。ANCA関連血管炎は、全身の小血管に炎症が起こる自己免疫疾患で、腎臓・肺・神経などに重篤な障害を引き起こすことがあります。
この記事では、リウマチ内科専攻医がANCA関連血管炎についてわかりやすく解説します。
患者さん血液検査でANCAが陽性と言われました。どんな病気なんですか?
子育て内科医ANCAは血管炎に関わる自己抗体です。腎臓や肺などに影響が出ることがありますので、詳しく検査しましょう。
目次
ANCA関連血管炎とは?
ANCA関連血管炎(AAV: ANCA-associated vasculitis)は、ANCA(抗好中球細胞質抗体)という自己抗体が関与して小血管に壊死性炎症を引き起こす疾患群です。日本では指定難病に指定されています。
主に3つの疾患が含まれます:
| 疾患名 | 略称 | 主なANCA | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 顕微鏡的多発血管炎 | MPA | MPO-ANCA | 日本で最多。腎・肺病変 |
| 多発血管炎性肉芽腫症(旧:ウェゲナー肉芽腫症) | GPA | PR3-ANCA(※日本ではMPO-ANCA陽性例も約30〜50%) | 上気道・肺・腎。肉芽腫形成 |
| 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧:チャーグ・ストラウス症候群) | EGPA | MPO-ANCA(一部) | 気管支喘息・好酸球増多が先行。ANCA陽性は約20〜40%のみ(陰性例が半数以上) |
発症の特徴
- 有病率: 日本では年間発症率は人口100万人あたり約22.6人。そのうち81%がMPAと、欧米よりMPAが圧倒的に多い
- 好発年齢: 60〜70代(平均発症年齢約70歳)
- 男女比: 女性がやや多い(全体で女性51%程度)
主な症状
全身症状
- 発熱・倦怠感・体重減少
腎臓
- 壊死性糸球体腎炎(半月体形成性): 急速に進行する腎機能障害(急速進行性糸球体腎炎: RPGN)
- 血尿・タンパク尿
- 放置すると透析が必要になることも
肺
- 肺出血: 血痰・喀血(致死的になりうる)
- 間質性肺炎(ILD): MPAに多い
上気道・耳鼻咽喉
- 慢性副鼻腔炎・鼻出血・鼻閉
- 鼻中隔穿孔・鞍鼻変形
- 中耳炎・難聴
神経・その他
- 多発単神経炎: 手足のしびれ・脱力
- 気管支喘息・好酸球増多(EGPAに先行して出現することが多い)
患者さん腎臓や肺など色々な臓器に影響するんですね。診断はどうやってするんですか?
子育て内科医血液検査(ANCA)、尿検査、腎生検、CTなどを組み合わせて診断します。早期発見が腎臓を守るうえで非常に大切です。
診断
- ANCA検査: MPO-ANCA(主にMPAに多い。EGPAは約20〜40%で陽性)、PR3-ANCA(GPAに多いが、日本ではGPAにもMPO-ANCA陽性例が少なくない)
- 尿検査: 血尿・タンパク尿・赤血球円柱
- 腎生検: 壊死性糸球体腎炎・半月体形成の確認(確定診断)
- 胸部CT: 肺浸潤影・肺出血・ILDの評価
- 病理組織: 肉芽腫性炎症(GPA・EGPA)
治療
寛解導入療法
- リツキシマブ(リツキサン®)+ステロイド: MPA・GPAに適応あり
- シクロホスファミド(エンドキサン®)+高用量ステロイド: 従来の標準療法
- アバコパン(タブネオス®): 補体C5a受容体拮抗薬。MPA・GPAに適応あり(寛解導入〜維持)。ADVOCATE試験にて52週時の寛解維持でプレドニゾンより優越性を示し、グルココルチコイド毒性の有意な低減が確認されている新薬
- 重篤な肺出血・急速進行性腎炎には血漿交換療法を併用することもある
寛解維持療法
- リツキシマブ: 寛解維持にも使用される
- アザチオプリン(イムラン®)
- ミコフェノール酸モフェチル(MMF): 適応外使用として用いられることがある
- メトトレキサート(MTX): GPAの維持療法に使用されることがある(腎機能正常例)
注意点・合併症
- 感染症リスク: 免疫抑制療法中はニューモシスチス肺炎(PCP)予防のためST合剤が重要
- 再燃リスク: 寛解後も再燃することがあり、長期フォローが必要
- 末期腎不全: 診断・治療が遅れると透析が必要になることがある
- 難聴: GPAでは感音性難聴が残ることがある
まとめ
- ANCA関連血管炎はMPA・GPA・EGPAの3疾患。日本ではMPAが最多
- MPO-ANCA→主にMPA(EGPAは約20〜40%のみ陽性、ANCA陰性例が多い)、PR3-ANCA→主にGPA(日本ではGPAにもMPO-ANCA陽性例が約30〜50%ある点に注意)
- 腎障害(急速進行性糸球体腎炎)・肺出血が重篤な合併症
- シクロホスファミド・リツキシマブ・アバコパン(新薬)で治療
- 感染症予防(PCP予防)・長期フォローが重要
- 早期診断・早期治療が腎・生命予後に直結する
