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乾癬性関節炎(PsA)とは?症状・診断・治療をリウマチ内科専攻医が解説

目次

乾癬性関節炎(PsA)とは?

乾癬性関節炎(PsA:Psoriatic Arthritis)は、皮膚の病気である乾癬に関節炎を合併した炎症性関節疾患です。乾癬の患者さんの20〜30%(欧米のデータ)に発症するとされており、決して珍しい病気ではありません。

乾癬性関節炎は、関節リウマチと似た関節の痛みや腫れを引き起こしますが、リウマチ因子(RF)が多くの場合陰性(血清反応陰性関節炎)であること、HLA-B27という遺伝的背景を持つ場合があること、骨びらんと骨増殖が混在するという画像所見の特徴があります。なお、一部の患者さんではRFが陽性になることもあります。

患者さん
先生、私は乾癬があるのですが、最近指や膝が痛くなってきました。乾癬と関係があるのでしょうか?
子育て内科医
はい、乾癬のある方が関節の痛みや腫れを感じたときは、乾癬性関節炎の可能性があります。乾癬患者さんの約4人に1人に合併することがありますので、しっかり評価していきましょう。

乾癬性関節炎の主な臨床像(5つの特徴的な病型)

乾癬性関節炎は、関節のどこがどのように侵されるかによって、複数の病型・臨床像に分けられます。複数の病型が重なることもあります。

① 末梢関節炎型

手や足の関節(膝・足首・手首・指の関節など)に非対称性の関節炎が生じるタイプです。最も多くみられる病型で、関節リウマチに似た症状を呈することがありますが、関節リウマチとは異なり左右非対称なことが多いのが特徴です。

② 脊椎炎型(脊椎・仙腸関節炎)

背骨(脊椎)や骨盤の仙腸関節に炎症が起きるタイプです。朝の腰のこわばりや、安静にしているときに悪化する腰痛・臀部痛が特徴的な症状です。強直性脊椎炎(体軸性脊椎関節炎)と類似した症状を示します。

③ 指炎(ソーセージ指)

指の腱鞘や腱そのものに炎症が起きることで、指全体がソーセージのようにパンパンに腫れる状態です。乾癬性関節炎に特徴的な所見のひとつで、手指・足趾どちらにも起こります。

④ 付着部炎

腱や靭帯が骨に付着する部分(付着部)に炎症が起きる病態です。アキレス腱付着部(かかとの後ろ)や足底腱膜付着部(かかとの裏)の痛みとして現れることが多く、「かかとが痛い」という訴えで来院される方も少なくありません。

⑤ DIP型(遠位指節間関節炎型)

手指・足趾の第一関節(DIP関節:指先に最も近い関節)に炎症が起きるタイプです。爪の乾癬(爪の変形・変色・剥離など)を伴うことが多く、爪病変があるときは特にこの病型を疑います。関節リウマチではDIP関節の炎症は通常みられないため、鑑別のポイントになります。

診断:CASPAR基準と画像所見

乾癬性関節炎の診断には、CASPAR基準(2006年)が国際的に使用されています。この基準では、炎症性の関節・脊椎・付着部の症状があることを前提に、以下の項目を点数化します。

  • 乾癬の存在(現在あれば2点・既往・家族歴は各1点)
  • 乾癬性爪病変(1点)
  • リウマチ因子(RF)陰性(1点)
  • 指炎・現在または既往(1点)
  • 関節周囲の骨増殖(手足のX線での新生骨形成)(1点)

合計3点以上で乾癬性関節炎と診断されます(特異度95.9%)。診断はあくまで専門医が行うものですので、関節症状が続く場合はリウマチ科への受診をお勧めします。

画像所見としては、骨びらん(骨の溶ける変化)と骨増殖(新しい骨ができる変化)が混在することが乾癬性関節炎の大きな特徴です。MRIは早期の関節炎・付着部炎・仙腸関節炎の検出に有用です。

また、診断の上で皮膚乾癬の確認が重要です。多くの場合は乾癬の皮膚症状が先に出現し、数年後に関節症状が加わりますが、関節症状が皮膚症状より先行することもあります。皮膚に乾癬の病変(頭皮・肘・膝・臍周囲などに多い)がないか、皮膚科医とも連携して確認します。

患者さん
血液検査でリウマチの反応が出なかったのに、「乾癬性関節炎かもしれない」と言われました。血液検査が正常でも診断できるのですか?
子育て内科医
はい、乾癬性関節炎はリウマチ因子(RF)が陰性であることが特徴のひとつです。血液検査だけで判断するのではなく、皮膚の状態・関節の症状・画像検査・CASPAR基準をもとに総合的に診断します。RF陰性でも診断できる病気なのです。

治療:症状の重さに応じた段階的な治療

乾癬性関節炎の治療は、関節症状の重症度・病型・皮膚症状の状態を考慮して選択します。皮膚と関節の両方に効果を持つ治療薬を優先的に選ぶことが重要です。なお、すべての治療は医師の判断のもとで行われます。

軽症の場合:NSAIDsと局所ステロイド

関節炎が軽度で少数の関節に限られている場合は、まずNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)で痛みや炎症を和らげます。特定の関節に強い炎症がある場合は、局所ステロイド注射(関節内注射)を行うこともあります。

中等症以上:メトトレキサート(MTX)など

NSAIDsだけでは不十分な場合や、多関節に炎症が及んでいる場合は、メトトレキサート(MTX)を中心とした疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を使用します。メトトレキサートは皮膚の乾癬と末梢関節炎の双方に効果があります。ただし、脊椎炎型や付着部炎・指炎への効果は限定的であるため、これらの病型では生物学的製剤の早期導入を検討します。

なお、メトトレキサートには定期的な血液検査(肝機能・血球チェック)が必要で、葉酸の併用が必須です。妊娠中は使用できません。必ず担当医の指示に従って使用してください。

生物学的製剤

中等症〜重症、または従来の治療で効果が不十分な場合に、生物学的製剤を使用します。使用前には結核・B型肝炎などの感染症スクリーニングが必要です。乾癬性関節炎に使用できる生物学的製剤には以下があります。

  • TNF阻害薬:アダリムマブ(ヒュミラ®)、エタネルセプト(エンブレル®)、インフリキシマブ(レミケード®)、ゴリムマブ(シンポニー®)など。関節・皮膚・脊椎炎・付着部炎すべてに有効で、使用経験が豊富です。
  • IL-17阻害薬:セクキヌマブ(コセンティクス®)、イキセキズマブ(トルツ®)。TNF阻害薬と同等以上の関節・皮膚への効果があり、脊椎炎型にも有効です。
  • IL-12/23阻害薬:ウステキヌマブ(ステラーラ®)。皮膚乾癬への効果が高く、末梢関節炎にも有効です。
  • IL-23阻害薬:グセルクマブ(トレムフィア®)、リサンキズマブ(スキリージ®)。皮膚への効果が特に優れており、関節炎にも有効です。

JAK阻害薬・PDE4阻害薬

経口の分子標的薬として、JAK阻害薬も乾癬性関節炎に使用されます。ウパダシチニブ(リンヴォック®)トファシチニブ(ゼルヤンツ®)が使用可能で、関節症状・皮膚症状・付着部炎・指炎に幅広く効果を示します。また、アプレミラスト(オテズラ®)(PDE4阻害薬)も軽〜中等症の皮膚・関節症状に使用される経口薬で、感染症スクリーニングなしで使いやすい選択肢です。

脊椎炎型への治療

脊椎や仙腸関節が主に侵される脊椎炎型では、メトトレキサートなどの従来型DMARDsの効果が乏しいため、TNF阻害薬またはIL-17阻害薬が第一選択となります。

皮膚科とリウマチ科の連携が大切

乾癬性関節炎では、皮膚症状(乾癬)が関節症状より先に出現することが多いため、皮膚科を受診中の乾癬患者さんが関節の痛みや腫れを感じたときは、速やかにリウマチ科への受診・連携が重要です。関節破壊は発症早期から進行することがあるため、早期診断・早期治療開始が大切です。

患者さん
皮膚科と整形外科、どちらに通えばいいのか迷っています。
子育て内科医
乾癬性関節炎は皮膚と関節の両方に関わる病気ですので、リウマチ科(もしくはリウマチ・膠原病内科)を受診されることをお勧めします。皮膚の乾癬は引き続き皮膚科で管理していただきながら、関節炎はリウマチ科で診ていく形が理想的です。両科が連携して治療にあたります。

まとめ

乾癬性関節炎は、乾癬を持つ方の約20〜30%に合併する炎症性関節疾患です。関節炎・脊椎炎・指炎・付着部炎など多彩な病型があり、CASPAR基準に基づいて診断します。治療は症状の重さに応じて段階的に行い、生物学的製剤やJAK阻害薬など有効な選択肢が増えています。

乾癬がある方で関節の痛み・腫れ・朝のこわばり・かかとの痛みなどが続く場合は、お早めにリウマチ科へご相談ください。早期に診断・治療を開始することで、関節破壊の進行を防ぎ、日常生活の質を維持することができます。

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