「SLEと強皮症と多発性筋炎が混ざっている」と言われたことはありますか?それが混合性結合組織病(MCTD)です。複数の膠原病の特徴を合わせ持つ指定難病について、リウマチ内科専攻医が解説します。
患者さん


混合性結合組織病(MCTD)とは?
混合性結合組織病(MCTD:Mixed Connective Tissue Disease)は、全身性エリテマトーデス(SLE)・全身性強皮症(SSc)・多発性筋炎(PM)の特徴が混在する自己免疫疾患です。1972年にSharpらによって提唱されました。日本での患者数は約1万人前後とされ、指定難病(52番)に認定されています。女性に圧倒的に多く(男女比 約1:10〜16)、20〜30歳代の若い女性に多く発症します。
MCTDの主な症状






① レイノー現象
MCTDのほぼ全例(90%以上)に認められる症状です。寒冷刺激で手指が白→青→赤と変色します。しばしば最初に現れる症状です。
② 手指・手の腫脹(ソーセージ様指)
手指全体がソーセージのように腫れる「手指腫脹」はMCTDに特徴的な所見です。手首・手全体の腫脹を伴うこともあります。
③ 関節炎
多発関節炎がよく見られます。SLEに類似した非びらん性関節炎が多いですが、一部でRAに類似した関節炎を呈することもあります。
④ SLE様症状
- 顔面紅斑・光線過敏
- 漿膜炎(胸膜炎・心膜炎)
- 白血球減少・貧血・血小板減少
- 腎炎(ループス腎炎に類似)※SLEより頻度は低い
⑤ 強皮症様症状
- 皮膚硬化(手指・顔面)
- 食道蠕動障害(嚥下困難・胸焼け)
- 肺線維症
⑥ 筋炎様症状
- 近位筋の筋力低下・筋痛
- CK(クレアチンキナーゼ)の上昇
⑦ 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
MCTDの最も重要な合併症です。息切れ・動悸・浮腫が症状で、予後に大きく影響します。定期的な心エコー検査でスクリーニングすることが重要です。息切れ・動悸・足のむくみが急に悪化した場合は、定期受診を待たずその日のうちにかかりつけ医または受診中の病院に連絡してください。夜間・休日でも症状が強い場合は救急受診を検討してください。
診断:抗U1-RNP抗体が鍵






MCTDの診断には抗U1-RNP抗体の高力価陽性が必須条件です。この抗体はMCTDに非常に特異的で、診断の要となります。
日本では厚生労働省の診断基準が使用されており、主要症状(レイノー現象・手指腫脹・肺高血圧症・筋炎・食道蠕動低下など)と抗U1-RNP抗体陽性を組み合わせて診断します。
治療






- ステロイド(プレドニゾロン):SLE様症状・筋炎・漿膜炎などに有効。できるだけ少量での維持を目指します。医師の指示なく自己判断で中断しないでください。急な中断は副腎不全などの危険な状態を招くことがあります。体調不良時(発熱・嘔吐など)は服薬できなくなる前に医療機関に連絡してください
- ヒドロキシクロロキン(プラケニル®):SLE様症状・関節炎の維持療法として使用します
- 免疫抑制薬:アザチオプリン・ミコフェノール酸モフェチルなど。ステロイド減量を目的に併用します
- カルシウム拮抗薬:レイノー現象に有効です
- 肺動脈性肺高血圧症の治療:PDE5阻害薬・エンドセリン受容体拮抗薬・プロスタサイクリン製剤。専門施設での治療が必要です
- プロトンポンプ阻害薬:食道逆流症状に使用します
MCTDの経過と予後
MCTDの経過は多様です。長期経過で一部の患者さんはSLE・強皮症・PMのいずれかに移行することがあります。肺動脈性肺高血圧症が予後を左右する最も重要な因子です。定期的なフォローアップを継続することが大切です。
日常生活で大切なこと
- 保温・防寒:レイノー現象の予防に手袋・カイロが有効です
- 日焼け対策:SLE様の光線過敏がある場合は紫外線対策が必要です
- 定期受診:特に肺高血圧症の早期発見のため定期的な心エコー検査を受けてください
- 息切れ・動悸の悪化:肺高血圧症のサインの可能性があります。早めに受診してください
- 妊娠・出産:妊娠を希望する場合は妊娠前から必ず担当の専門医に相談してください。使用中の薬剤(特にミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制薬)には妊娠中・授乳中に使用できないものがあります。自己判断で薬を中断・継続することは危険です
- 医療費助成:指定難病(52番)のため、条件を満たすと医療費助成を受けられます
まとめ
- MCTDはSLE・強皮症・多発性筋炎の特徴が混在する自己免疫疾患で指定難病(52番)です
- 抗U1-RNP抗体の高力価陽性が診断に必須です
- レイノー現象・手指腫脹・関節炎・SLE様症状・強皮症様症状・筋炎様症状が組み合わさります
- 肺動脈性肺高血圧症が最も重要な合併症で、定期的な心エコーでスクリーニングします
- 息切れ・動悸の悪化は早めに受診してください
- 症状に応じてステロイド・免疫抑制薬・各臓器への対症療法を組み合わせます
- 指定難病の医療費助成制度を積極的に活用してください
