強皮症(全身性強皮症)は、皮膚や内臓が硬くなる自己免疫疾患です。指定難病に指定されており、リウマチ内科・膠原病内科が専門とする疾患です。この記事では、症状・診断・治療をわかりやすく解説します。
患者さん


強皮症(全身性強皮症)とは?
強皮症(全身性強皮症:SSc, Systemic Sclerosis)は、免疫系の異常により皮膚・血管・内臓臓器に線維化(硬化)が起こる自己免疫疾患です。日本での患者数は約2〜3万人とされ、指定難病に認定されています。女性に多く(男女比 約1:4)、30〜50歳代での発症が多いです。
限局皮膚硬化型と全身皮膚硬化型
強皮症は皮膚硬化の範囲によって大きく2つに分類されます。
- 限局皮膚硬化型(lcSSc):手・前腕・顔・頸部など肘・膝より末梢に限局。抗セントロメア抗体が陽性のことが多い。比較的ゆっくりと進行することが多いですが、肺高血圧症など重篤な合併症が起こることがあるため定期的なフォローが必要
- 全身皮膚硬化型(dcSSc):肘・膝より中枢にも広がる。抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)が陽性のことが多い。間質性肺疾患・腎クリーゼなど内臓病変を合併しやすく、より注意が必要
強皮症の主な症状






① レイノー現象
寒冷刺激や緊張で手指が白→青→赤と変色する現象です。強皮症で最も早期から現れる症状の一つで、約9割の患者さんで認められます。
② 皮膚硬化・皮膚の変化
手指から始まる皮膚の硬化・腫脹(むくみ)が特徴です。指の皮膚が硬くなり、関節が曲げにくくなることがあります(手指硬化)。顔の皮膚が硬化すると口が開きにくくなることもあります。
③ 間質性肺疾患(ILD)
肺の組織が線維化し、息切れ・乾性咳嗽が起こります。強皮症に関連した間質性肺疾患(SSc-ILD)は予後に影響する重要な合併症です。定期的な肺機能検査・胸部CTが必要です。また、息切れや咳が急に悪化した場合は定期受診を待たず、速やかに主治医に連絡してください。
④ 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
肺の血管が狭くなり、肺動脈圧が上昇します。息切れ・動悸・浮腫が症状です。限局型に合併しやすく、定期的な心エコー検査でスクリーニングします。息切れ・動悸・足のむくみが増悪した場合は、次回受診を待たず早めに受診してください。
⑤ 消化管病変
食道の蠕動障害による嚥下困難・胸焼け(逆流性食道炎)が多くみられます。腸管病変では便秘・下痢・腹部膨満感が起こることがあります。
⑥ 強皮症腎クリーゼ
急激な血圧上昇・急性腎不全を来す緊急状態です。全身皮膚硬化型の早期(発症5年以内)に起こりやすく、高用量ステロイド使用が誘因になることがあります。ただし、ステロイドが処方されている場合は自己判断で中断せず、必ず主治医に相談してください。急激な血圧上昇(平時より著しく高い値)・頭痛・尿量減少を認めた場合は、当日中に医療機関を受診するか、状態が重篤な場合は救急受診してください。腎クリーゼは数時間単位で腎機能に影響する緊急状態です。ACE阻害薬(カプトプリルなど)が第一選択薬です。
診断に使われる検査






- 抗核抗体(ANA):ほぼ全例で陽性
- 抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70):全身皮膚硬化型・間質性肺疾患と関連
- 抗セントロメア抗体:限局皮膚硬化型・肺高血圧症と関連
- 抗RNAポリメラーゼIII抗体:全身皮膚硬化型・腎クリーゼと関連
- 皮膚生検:線維化の組織学的確認
- 肺機能検査・胸部HRCT:間質性肺疾患の評価
- 心エコー:肺動脈高血圧のスクリーニング
強皮症の治療






強皮症は根治療法はなく、各症状・臓器病変に応じた対症療法・臓器保護療法が中心です。
- レイノー現象:カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)・保温
- 間質性肺疾患:ニンテダニブ(オフェブ®)が2020年に日本で承認。ミコフェノール酸モフェチル・シクロホスファミドも使用
- 肺動脈性肺高血圧症:PDE5阻害薬・エンドセリン受容体拮抗薬・プロスタサイクリン製剤
- 皮膚硬化(早期):メトトレキサート・ミコフェノール酸モフェチル
- 腎クリーゼ:ACE阻害薬(カプトプリルなど)が第一選択
- 消化管病変:プロトンポンプ阻害薬(胃食道逆流)・消化管蠕動改善薬
- リツキシマブ(リツキサン®):CD20陽性B細胞を標的とする生物学的製剤。日本では2021年9月に「全身性強皮症」への適応が承認されています(DESIRES試験に基づく世界初の承認)。主に皮膚硬化に対する効果が示されています。なお、皮膚硬化以外の病変(肺・消化管など)への有効性は十分に検討されておらず、重度の間質性肺炎を有する患者さんへは禁忌となっています
- トシリズマブ(アクテムラ®):IL-6受容体を阻害する生物学的製剤。米国FDAでは2021年にSSc-ILDへの適応が承認されています(focuSSced試験に基づく)。日本では現時点で強皮症への保険適用はなく、使用する場合は適応外使用となります。使用に際しては必ず主治医にご相談ください
日常生活で大切なこと
- 保温・防寒:レイノー現象の予防に手袋・カイロが有効。急激な温度変化を避ける
- 禁煙:血管障害・肺病変の悪化を防ぐために禁煙は必須
- 定期受診・検査:自覚症状がなくても肺・心臓・腎臓の定期チェックが重要
- 血圧の自己管理:腎クリーゼ予防のため、血圧手帳での管理を推奨
- 口腔ケア:口が開きにくい場合は歯科と連携。開口訓練も有効
- 薬の自己中断をしない:症状が落ち着いていても、自己判断で薬を中断せず必ず主治医に相談してください
医療費助成について
強皮症(全身性強皮症)は指定難病(56番)に認定されており、一定の条件を満たすと難病医療費助成制度を利用できます。月の自己負担上限が設定されるため、高額になりがちな治療費の軽減につながります。主治医・医療ソーシャルワーカー(MSW)にご相談ください。






まとめ
- 強皮症は皮膚・血管・内臓が線維化する自己免疫疾患で、指定難病
- レイノー現象が早期サインとなることが多い
- 間質性肺疾患・肺高血圧症・腎クリーゼなど内臓病変の早期発見が重要
- 自己抗体の種類(抗Scl-70・抗セントロメア・抗RNAポリメラーゼIII)が病型・リスクを反映
- 根治は難しいが、臓器ごとの治療で生活の質を保つことができる
- 保温・禁煙・定期受診・血圧管理が日常生活の基本
- 指定難病の医療費助成制度を積極的に活用する

