「ステロイドって副作用が怖いんでしょう?」「プレドニンを飲み始めたけど、何に気をつければいいの?」——膠原病や関節リウマチと診断され、ステロイド(プレドニゾロン、商品名:プレドニン)を処方された患者さんから、こうしたご質問をよくいただきます。
ステロイドは炎症を強力に抑える大切な薬ですが、長期・高用量での使用には副作用が伴うことも事実です。ただし、副作用を正しく理解して適切に対処することで、ステロイドと上手につき合いながら治療を続けることができます。この記事では、リウマチ膠原病内科の専攻医として、ステロイドの主な副作用とその対処法を丁寧に解説します。
📋 この記事でわかること
- ステロイドの主な副作用(骨粗鬆症・感染症・血糖上昇・体重増加など)
- 副作用が出やすいタイミングと注意すべきサイン
- 骨粗鬆症予防のための具体的な対策
- 日常生活でできる副作用を最小限に抑える工夫
- 副作用への不安を主治医に相談するときのポイント
そもそもステロイドとは?なぜ使われるの?
患者さん


ステロイドとは、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)を人工的に合成した薬のことです。代表的なものがプレドニゾロン(プレドニン®)です。体の免疫反応や炎症を強力に抑える作用があるため、膠原病・関節リウマチ・全身性エリテマトーデス(SLE)・血管炎など、多くの免疫疾患の治療に使われています。
ステロイドは炎症を素早く鎮める効果が高い一方、長期間・高用量で使用すると様々な副作用が生じることがあります。そのため、現在の治療では「最小有効量」を目指しながら、できるだけ少ない量での管理が推奨されています。
ステロイドの主な副作用一覧






① 骨粗鬆症・骨折リスクの上昇
ステロイドの長期使用で最も重要な副作用のひとつです。ステロイドは骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを抑え、骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させるため、骨密度が低下します。また、腸でのカルシウム吸収を低下させ、腎臓からのカルシウム排泄を増やすことも骨密度低下に影響します。
ステロイドを長期的に使用する場合は、骨粗鬆症の予防・治療薬(ビスホスホネート製剤など)の併用が推奨されています。骨密度検査(DXA法)を定期的に受けることも重要です。
② 感染症にかかりやすくなる
ステロイドは免疫を抑える薬のため、細菌・ウイルス・真菌(カビ)などへの抵抗力が下がり、感染症にかかりやすくなります。特に注意が必要なのは以下のような感染症です。
- 肺炎:一般的な細菌性肺炎のほか、ニューモシスチス肺炎(PCP)という特殊な肺炎のリスクも高まります。高用量のステロイドを使用する場合には予防薬(ST合剤)が処方されることがあります。
- 帯状疱疹:水ぼうそうウイルスが再活性化して起こる帯状疱疹のリスクが上がります。
- 口腔・食道のカンジダ症:口の中や食道にカビ(カンジダ)が繁殖することがあります。うがいを習慣にすることが予防になります。
発熱・咳・呼吸困難・皮疹などの症状が現れた場合は、速やかに主治医に連絡してください。
③ 血糖値の上昇(ステロイド糖尿病)
ステロイドには肝臓での糖の産生を高め、インスリンの効きを低下させる作用があります。そのため、ステロイドを使用すると血糖値が上がりやすくなります。特食後(特に昼食・夕食後)に血糖値が上がりやすいのが特徴です。
もともと糖尿病や血糖値が高めの方は特に注意が必要です。定期的な血液検査での血糖・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の確認が推奨されます。食事や運動療法が基本ですが、血糖コントロールが難しい場合は血糖降下薬が処方されることもあります。
④ 体重増加・満月様顔貌(ムーンフェイス)
ステロイドには食欲を増進させる作用があり、体重が増えやすくなります。また、脂肪の分布が変わり、顔が丸くなる「満月様顔貌(ムーンフェイス)」、背中の上部に脂肪がたまる「バッファローハンプ」などが生じることがあります。これらは用量が減ったり、ステロイドを漸減・中止することで徐々に改善します。
食事内容に気をつけ、炭水化物・脂肪の過剰摂取を避け、適度な運動(関節に負担のかからない範囲で)を続けることが対策になります。
⑤ 胃腸障害(胃潰瘍・胃炎)
ステロイドは胃の粘膜を保護する物質の産生を抑えるため、胃炎や胃潰瘍が生じやすくなります。特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用では胃腸障害のリスクが高まります。胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)を予防的に一緒に処方されることが多いです。
⑥ 精神症状(不眠・気分の変動)
ステロイドは中枢神経にも影響し、不眠・気分の高揚・焦燥感・気分の落ち込みなどが生じることがあります。用量が多いほど出やすく、減量とともに改善することが多いです。不眠が強い場合は睡眠薬の併用を検討することもあります。気になる症状は主治医に遠慮なく相談してください。
⑦ 皮膚・目への影響
皮膚が薄くなる・傷が治りにくい・あざができやすいなどの皮膚症状が出ることがあります。また、長期使用で目への影響として、白内障(水晶体が白くなる)や緑内障(眼圧が上がる)のリスクが上昇します。定期的な眼科チェックが推奨されます。
骨粗鬆症予防のための具体的な対策






薬での予防・治療
ステロイドを長期使用する場合、ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸、リセドロン酸など)などの骨粗鬆症治療薬の予防的投与が推奨されています。これらの薬は骨密度の低下を抑え、骨折リスクを下げる効果があります。カルシウム・ビタミンDのサプリメントを合わせて服用することも推奨されます。
食事での対策
- カルシウムを積極的に摂る:牛乳・乳製品・小魚・豆腐・ほうれん草などカルシウムが多い食品を毎日の食事に取り入れましょう。
- ビタミンDを摂る:サーモン・サバ・サンマ・きのこ類などビタミンDが多い食品を意識して食べましょう。適度な日光浴もビタミンDの合成を助けます。
- 塩分・過度なカフェインを控える:カルシウムの排泄を促進するため、過剰な塩分やカフェインは控えめに。
運動での対策
骨に適度な刺激を与えることが骨密度維持に役立ちます。ウォーキングや軽いスクワットなど体重を支える運動(荷重運動)が効果的です。ただし、関節に強い負担がかかる運動は関節リウマチの症状を悪化させる可能性があるため、主治医や理学療法士と相談しながら取り組みましょう。転倒予防も重要で、バランス訓練や自宅の環境整備(滑り止めマット、手すりの設置など)も検討してください。
副作用を最小限にするための日常生活の工夫






絶対に守ってほしいこと
- 自己判断でステロイドを急にやめない:ステロイドを急に中止すると副腎不全(体が必要なホルモンを作れなくなる状態)になる危険があります。必ず主治医の指示に従って少しずつ減量します。
- 感染症対策を徹底する:こまめな手洗い・うがい、マスクの着用、人混みを避けるなどの感染予防を心がけましょう。ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)も主治医と相談の上、積極的に検討してください。
- 定期受診・血液検査を欠かさない:副作用の早期発見のために、定期的な受診と血液検査が大切です。骨密度検査や眼科受診も定期的に行いましょう。
生活習慣の改善ポイント
- 食事:塩分を控え、カルシウム・ビタミンD・タンパク質を意識して摂る。糖分・脂肪の過剰摂取を避けて体重管理をする。
- 運動:体調に合わせた適度な運動を継続する。関節への過度な負担を避けながら、骨や筋肉を維持する運動を取り入れる。
- 禁煙・節酒:喫煙は骨密度低下・感染症リスク増加に影響します。過度な飲酒も骨粗鬆症のリスクを高めます。
- ストレス管理と睡眠:不眠や気分の変動が出やすいため、睡眠リズムを整え、無理のない生活を心がけましょう。
副作用が心配なときの主治医への相談の仕方






副作用への不安は、治療のモチベーション低下や自己判断による服薬中断につながることがあります。主治医に相談する際は、以下のポイントを意識してみましょう。
- 症状を具体的に伝える:「体重が〇kg増えた」「眠れない夜が続いている」「顔が丸くなった気がする」など、具体的な変化を伝えましょう。
- いつから起きているか記録する:症状が始まった時期・頻度・程度をメモしておくと診察がスムーズになります。
- ステロイドを減らせるか聞いてみる:病状が落ち着いてきたら「最小有効量に向けて減量できますか?」と質問してみましょう。
- 骨密度検査や眼科受診の必要性を確認する:定期チェックのスケジュールを主治医と確認しておきましょう。
まとめ:ステロイドを「怖い薬」から「上手に使う薬」へ
ステロイドは確かに副作用が多い薬ですが、適切な用量で、適切な対策を取りながら使えば、膠原病・関節リウマチの炎症を抑え、生活の質を保つうえで非常に有効な薬です。
大切なのは以下の3点です。
- 副作用を正しく理解して、適切な予防・対策を取る
- 自己判断で急にやめず、主治医の指示に従って最小有効量を目指す
- 不安や気になる症状は主治医にオープンに相談する
ステロイドを使いながらも、できるだけ元気に毎日を過ごしてほしい——そういう思いで、私はこのブログを書いています。一人で不安を抱えず、主治医とともに治療に向き合っていきましょう。
免責事項:本記事は膠原病・関節リウマチ患者さん向けの一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の代替となるものではありません。ステロイドの服用・減量・中止については、必ず担当医の指示に従ってください。体調の変化や副作用が疑われる症状が出た際は、速やかに主治医にご相談ください。

