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シェーグレン病とは?症状・診断・治療をリウマチ内科専攻医がわかりやすく解説

「目が乾く」「口が渇く」——そんな症状が続いていても、「年齢のせいかな」と見過ごしていませんか?シェーグレン病は、涙腺や唾液腺が自己免疫反応によって障害される病気で、日本国内には数十万人の患者がいると推定されています。患者の約9割が女性であり、特に30〜60代に多く見られます。症状が多彩で他の疾患と紛らわしいため、診断まで数年かかることも珍しくありません。

この記事では、リウマチ・膠原病内科専攻医の立場から、シェーグレン病の基本的な知識——原因・症状・診断・治療、そして妊娠との関係——をわかりやすく解説します。

📌 この記事でわかること

  • シェーグレン病とはどんな病気か(原発性・続発性の違い)
  • ドライアイ・ドライマウス以外の全身症状
  • 診断に使われる検査(抗SS-A抗体・口唇腺生検・Schirmerテスト)
  • 治療法(局所療法・ヒドロキシクロロキンなど)
  • 妊娠・出産との関係(新生児ループス・先天性完全房室ブロック)
目次

シェーグレン病とはどんな病気?

シェーグレン病(Sjögren’s disease)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺を標的とする自己免疫疾患です。免疫システムが誤って自分自身の組織を攻撃し、腺組織に炎症を引き起こします。その結果、涙や唾液の分泌が著しく低下し、ドライアイ(乾燥性角結膜炎)やドライマウス(口腔乾燥症)が生じます。

原発性と続発性の違い

シェーグレン病には大きく2種類あります。

  • 原発性シェーグレン病:他の膠原病を伴わず、シェーグレン病単独で発症するもの
  • 続発性シェーグレン病:関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症などの膠原病に合併して生じるもの

続発性の場合、もともとの膠原病の治療と並行してシェーグレン病の管理も必要になります。膠原病全般については、当ブログの関連記事もあわせてご参照ください。

シェーグレン病って、リウマチや膠原病とは別の病気ですか?

シェーグレン病は膠原病のひとつです。関節リウマチやSLEに合併することも多く、「続発性シェーグレン病」と呼ばれます。単独で発症する場合は「原発性」といいます。

シェーグレン病の主な症状

シェーグレン病の症状は、腺組織の障害によるものと、全身に及ぶものとに分けられます。

腺性症状(主な乾燥症状)

  • ドライアイ:目がゴロゴロする、充血する、光がまぶしい、涙が出にくい
  • ドライマウス:口の中が乾く、食べ物が飲み込みにくい、虫歯が増えた、話しにくい
  • 耳下腺・顎下腺の腫脹:頬や顎の周辺が繰り返し腫れる
  • その他の乾燥症状:鼻腔・気道・膣の乾燥、皮膚の乾燥など

全身症状

シェーグレン病は「乾燥の病気」というイメージがありますが、全身に影響を及ぼすことがあります。

  • 疲労感・倦怠感:日常生活に支障をきたすほどの強い疲れ
  • 関節痛・筋肉痛:多関節にわたる痛みやこわばり
  • 腎障害:尿細管性アシドーシス(腎臓の酸塩基調節の障害)が起こることがある
  • 末梢神経障害:手足のしびれや感覚異常
  • 皮膚症状:血管炎による皮疹(紫斑など)
  • リンパ腫のリスク:長期経過の中で、非ホジキンリンパ腫の発生リスクが一般集団より高いことが知られています(定期的なフォローアップが重要です)

目や口の乾きだけでなく、疲れやすさや関節の痛みもシェーグレン病の症状なんですか?

そうなんです。「乾燥だけの病気」と思われがちですが、強い疲労感や関節痛、腎臓や神経への影響が出ることもあります。症状が多彩なため、診断が遅れるケースも少なくありません。

シェーグレン病の診断方法

シェーグレン病の診断は、症状・血液検査・組織検査・機能検査を組み合わせて行います。現在、国際的には2016年のACR/EULARの分類基準が広く用いられています。

血液検査:疾患と関連する抗体

  • 抗SS-A抗体(抗Ro抗体):シェーグレン病で最もよく検出される抗体。陽性率は約70〜80%。妊娠への影響を考える上でも重要です。
  • 抗SS-B抗体(抗La抗体):抗SS-A抗体とともに検出されることが多い。陽性率は約40〜50%。
  • その他:ANA(抗核抗体)、リウマトイド因子(RF)、高ガンマグロブリン血症なども参考所見として評価されます。

口唇腺生検

下唇の粘膜から小唾液腺(口唇腺)を採取し、病理組織で「リンパ球浸潤巣(フォーカス)」の数を確認します。4mm²あたり50個以上のリンパ球浸潤が1巣以上確認された場合、陽性と判断されます。診断の確実性を高める重要な検査です。

乾燥の評価

  • Schirmerテスト:下まぶたに細い試験紙を挟み、5分間で涙の分泌量を測定します。5mm以下の場合、涙液分泌低下と判断します。
  • 唾液分泌量測定(ガム試験):ガムを噛みながら10分間の唾液量を測定します。10mL以下が低下の目安です。
  • 眼科的検査:スリットランプ検査や角膜・結膜の染色による障害の評価。

シェーグレン病の治療法

シェーグレン病は現時点では根治療法がなく、症状のコントロールと臓器障害の予防が治療の中心となります。

局所療法(乾燥症状へのアプローチ)

  • 人工涙液・保湿点眼薬:ドライアイに対して頻回に使用します。防腐剤を含まないタイプが推奨されることが多いです。
  • 涙点プラグ:涙の排出口(涙点)を塞ぐことで涙液量を保持する処置です(眼科で施行)。
  • 人工唾液・口腔保湿ジェル:ドライマウスの緩和に用います。
  • 唾液分泌促進薬:セビメリン塩酸塩(サリグレン®など)が保険適用で使用できます。

全身療法

  • ヒドロキシクロロキン(プラケニル®):自己免疫疾患への効果が認められており、シェーグレン病でも疲労感や関節症状の軽減、疾患活動性の抑制を目的に使用されることがあります。SLEでも広く使用されており、妊娠中も継続が推奨される薬剤のひとつです。
  • ステロイド薬:腎障害・血管炎・神経障害など、臓器病変が生じた場合に使用されます。副作用を最小限にするため、最小有効量を使用する原則が重要です。
  • メトトレキサート:関節症状に対してはメトトレキサートを使用することがあります。
  • 免疫抑制薬:重篤な臓器病変には、ミゾリビンやシクロスポリンなどが用いられることがあります。

シェーグレン病って、一生治らないんですか?薬を飲み続けるしかないの?

現時点では根治療法はありませんが、適切な治療で症状をコントロールし、多くの方が日常生活を送られています。乾燥症状には点眼薬や口腔ケア、全身症状にはヒドロキシクロロキンなどを組み合わせます。定期的な経過観察が大切ですよ。

シェーグレン病と妊娠・出産の関係

シェーグレン病は女性に多い疾患であり、妊娠可能年齢の女性が罹患するケースも少なくありません。妊娠を希望するシェーグレン病の患者さんにとって、特に重要なポイントをまとめます。

抗SS-A抗体陽性の場合の胎児リスク

シェーグレン病で最も重要な妊娠関連リスクのひとつが、抗SS-A抗体(抗Ro抗体)が胎盤を通じて胎児に移行することによる影響です。

  • 新生児ループス:抗SS-A抗体が胎児に移行することで、新生児に一時的な皮疹・血球減少・肝機能異常などが生じることがあります。これらは母体由来の抗体が消失する生後6ヶ月ごろまでに自然に回復することがほとんどです。
  • 先天性完全房室ブロック(CHB):最も深刻な合併症のひとつです。抗SS-A抗体が胎児の心臓の刺激伝導系に作用し、心臓のリズムが著しく遅くなる「完全房室ブロック」を引き起こすことがあります。発生頻度は抗SS-A抗体陽性妊婦全体の約1〜3%とされていますが、一度発症すると不可逆性であり、出生後にペースメーカー植込みが必要になることもあります。

妊娠中の管理:胎児心エコーモニタリング

抗SS-A抗体陽性が確認されている場合、妊娠中に胎児心エコー検査による定期的なモニタリングが推奨されます。先天性完全房室ブロックは妊娠18〜26週頃に発症しやすいとされており、この時期に集中的なフォローアップが行われることが多いです。

ヒドロキシクロロキンは、先天性完全房室ブロックの発症リスクを低減する可能性が一部の研究で示されており、抗SS-A抗体陽性の妊婦における使用が検討されることがあります(担当医との十分な相談が必要です)。

妊娠前から専門医との連携を

シェーグレン病の患者さんが妊娠を希望する場合は、妊娠前からリウマチ・膠原病内科医と産科医(母体胎児医学専門医)との連携体制を整えることが大切です。抗SS-A抗体の有無を事前に確認し、リスクに応じた管理計画を立てておくことで、より安全な妊娠・出産につながります。SLEや関節リウマチを合併している場合は、それぞれの疾患の活動性管理も重なってくるため、より慎重な対応が求められます。

抗SS-A抗体が陽性だとわかったら、妊娠は諦めたほうがいいですか?

諦める必要はありません。抗SS-A抗体陽性であっても、多くの方が無事に出産されています。大切なのは、妊娠前から専門医と相談し、妊娠中の胎児心エコーモニタリングなどの管理を計画的に行うことです。

まとめ

シェーグレン病は、目や口の乾燥を主な症状とする自己免疫疾患ですが、全身に多彩な症状を引き起こすこともある疾患です。患者の大多数が女性であり、妊娠可能年齢に発症することも少なくありません。

  • 「目が乾く」「口が渇く」が続く場合は、シェーグレン病を念頭に置いた受診を検討してください
  • 抗SS-A抗体・抗SS-B抗体の検査、口唇腺生検、Schirmerテストなどを組み合わせて診断します
  • 局所療法(人工涙液・唾液分泌促進薬など)と全身療法(ヒドロキシクロロキン・ステロイドの最小有効量使用)が治療の柱です
  • 抗SS-A抗体陽性の場合、妊娠中は新生児ループスや先天性完全房室ブロックのリスクがあるため、胎児心エコーによる定期的な管理が推奨されます
  • 妊娠を希望する場合は、妊娠前からリウマチ・膠原病内科医と産科医の連携のもとで計画的に進めることが重要です

シェーグレン病は、適切な診断と管理のもとで、多くの患者さんが日常生活を送ることのできる疾患です。気になる症状がある方は、まずはかかりつけ医やリウマチ内科へご相談ください。

※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断や治療を推奨するものではありません。症状が気になる方は必ず医療機関を受診してください。

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