「生後2週間で顔にブツブツが出てきた」「頭皮に黄色いかさぶたがついている」「体中が赤くて心配…でもどこに相談すればいいの?」——0歳の赤ちゃんを育てるパパ・ママにとって、乳児湿疹はとても心配な肌トラブルのひとつです。でも安心してください。生後6ヶ月以内の赤ちゃんに乳児湿疹はとてもよく見られるもので、多くの場合は適切なスキンケアで改善します。この記事では、内科医であり0歳児子育て中のママである私が、乳児湿疹の種類・原因・月齢別の特徴・スキンケアのコツ・保湿剤の選び方・受診の目安をまとめて解説します。
乳児湿疹とは?——赤ちゃんの肌の特徴から理解する
乳児湿疹とは、生後0〜1歳未満(乳児期)の赤ちゃんにみられるさまざまな湿疹の総称です。1つの病名ではなく、原因が異なる複数のタイプの湿疹がまとめて呼ばれています。
赤ちゃんの肌は大人と大きく異なります:
- 肌の厚さが大人の約1/2〜1/3程度で薄くてデリケート
- 皮脂や汗の分泌が不安定(多すぎたり少なすぎたり)
- 肌のバリア機能(外からの刺激を防ぐ力)が未熟
- 水分が蒸発しやすく、乾燥しやすい
こうした赤ちゃん特有の肌の性質から、月齢によって異なるタイプの湿疹が現れます。
乳児湿疹の主な種類と特徴
①新生児ざ瘡(新生児にきび)
時期:生後2〜4週間頃〜2ヶ月頃
部位:頬・額・鼻まわり・あご
見た目:赤いぶつぶつ(丘疹)。ニキビに似た外観
原因:妊娠中にお母さんから赤ちゃんに移行した母体由来のホルモン(アンドロゲンなど)が、皮脂腺を刺激して皮脂分泌を亢進させるために起きます。最近はMalassezia(マラセチア)という皮膚常在菌の関与も指摘されています。
経過と対処:多くの場合、生後1〜2ヶ月で母体ホルモンが消えるとともに自然に改善します。毎日のお風呂でやさしく洗うことが基本です。強くこすったり、ざらざらしたタオルで拭くのはかえって肌を傷つけるので避けてください。
患者さん


②乳児脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎)
時期:生後2週間〜3ヶ月頃(皮脂分泌が多い時期)
部位:頭皮・額・眉毛・耳の周り・鼻まわり(皮脂分泌が多い「脂漏部位」)
見た目:黄色っぽい、べたべたしたかさぶた(痂皮・にゅうか)やフケのようなもの。赤みを伴うこともある
原因:母体ホルモンの影響で皮脂分泌が過剰になり、毛穴に皮脂が詰まることで起きます。かゆみは軽度またはなし。
対処法:
- 入浴前にベビーオイル・植物性のオリーブオイルなどを頭皮・患部に塗って、30分〜1時間程度置く
- オイルで軟らかくなったら、ベビーシャンプーを泡立てて指の腹でやさしく洗い流す
- 無理にはがそうとしない——肌を傷つけて感染のリスクになる
- 頑固な場合は皮膚科・小児科でステロイド外用薬が処方されることがある
③皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)
時期:生後3〜6ヶ月頃〜(皮脂分泌が急減するタイミング)
部位:頬・腕の外側・すね・背中など全身
見た目:乾燥した赤み・かさかさ・粉を吹いたような状態。かゆみを伴うことがある
原因:母体ホルモンが抜けると皮脂分泌が急激に減り、肌のバリア機能が低下して乾燥湿疹が起きやすくなります。秋冬・エアコンで乾燥する室内環境でも悪化します。
対処法:保湿が最優先。入浴後5〜10分以内に全身に保湿剤をたっぷり塗ることで改善します。
④あせも(汗疹・かんしん)
時期:夏・厚着をさせた時期
部位:首まわり・わきの下・ひじの内側・おむつの当たる部分・背中
見た目:小さな赤い点状のぶつぶつ(赤あせも)、または白い小さな水ぶくれ(白あせも)
原因:汗腺の出口が角質で詰まり、汗が皮膚の中に溜まって起きます。赤ちゃんは汗腺密度が高く汗をかきやすいため、特になりやすいです。
対処法:
- 室温調整(夏は25〜27℃目安)、厚着させない
- 汗をかいたらすぐにぬれタオルで拭くかシャワーを
- 通気性のよい綿素材の服を選ぶ
- ひどい場合は弱いステロイド外用薬が処方されることも
⑤おむつかぶれ(接触皮膚炎)
部位:おしり・股・内もも・陰部
見た目:赤み、ただれ、皮膚が剥けている。ひどい場合はジクジクする
原因:おしっこ・うんちに含まれるアンモニアや消化酵素が皮膚を刺激し、さらにおむつのゴムや素材との摩擦が加わることで起きます。下痢気味のときは特に悪化しやすいです。
対処法:
- こまめなおむつ替え(うんち後はすぐに)
- 拭くときはやさしく押さえるように(こすらない)
- 清潔にした後に亜鉛化軟膏やワセリンを保護バリアとして塗る
- おむつを少し緩めに当て、通気をよくする
- 改善しない場合・カンジダ(酵母菌)感染が疑われる場合は小児科・皮膚科へ
アトピー性皮膚炎との見分け方
乳児湿疹で一番気になるのが「これってアトピーじゃないか?」という心配です。実は乳児期早期(生後3ヶ月まで)は、脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎を見分けることは難しく、専門医でも判断に迷うことがあります。
アトピー性皮膚炎を疑うポイント:
- 生後2ヶ月以降も湿疹が続き、良くなったり悪くなったりを繰り返す(慢性・反復性。日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、乳児は「2ヶ月以上」の慢性・反復性経過を目安としています)
- かゆみが強い——赤ちゃんが顔をこすりつける、眠れない、不機嫌になる
- 左右対称に出やすい(頬・ひじの内側・ひざの裏など)
- 家族歴:両親や兄弟にアトピー性皮膚炎・喘息・アレルギー性鼻炎がある
乳児湿疹(一般的なもの)の特徴:
- 生後3ヶ月前後までに自然に消えることが多い
- かゆみは軽度またはなし
- 左右非対称のことが多い
「2ヶ月を過ぎても続く」「かゆがっている」「繰り返している」という場合は、小児科か皮膚科を受診してアトピー性皮膚炎の評価をしてもらいましょう。
スキンケアの基本——「洗う」「保湿する」の2ステップ
乳児湿疹のケアで最も重要なのは、毎日のスキンケアを丁寧に続けることです。特別なことは何もなく、基本はたった2つ:「しっかり洗う」「しっかり保湿する」です。
STEP1:毎日のお風呂でやさしく洗う
赤ちゃんの肌には皮脂・汗・ほこり・ミルクのよだれなどさまざまな汚れが付着しています。毎日丁寧に洗い流すことが、乳児湿疹を予防・改善する第一歩です。
洗い方のポイント:
- ベビー用の石けんまたはボディソープ(泡タイプが使いやすい)を使う
- 石けんをよく泡立ててから、指の腹でやさしくなで洗いする
- ゴシゴシこすらない——バリア機能を壊してしまう
- 首のシワ・わきの下・股・耳の裏などシワの奥まで洗う
- 石けんはしっかり流す(残ると刺激になる)
- 脂漏性湿疹がある部位は、ベビーシャンプーを使って頭皮も毎日洗う
- お風呂後は清潔なタオルで押さえるようにして拭く(こすらない)
STEP2:入浴後5〜10分以内に保湿する
お風呂から上がると皮膚の水分が急速に蒸発します。保湿剤は入浴後5〜10分以内に塗ることが最大の効果を発揮します。
保湿のポイント:
- 全身に保湿剤をたっぷりと塗る(ケチらない)
- 顔も忘れずに(口まわり・頬・おでこ)
- 乾燥が強い部位には重ね塗りしても良い
- 1日1回が基本。乾燥が目立つ時期は朝夕2回でも



保湿剤の種類と選び方
ドラッグストアやネットにはさまざまなベビー用保湿剤が並んでいますが、選び方のポイントは「低刺激・無香料・無添加」です。香料・防腐剤(パラベンなど)・アルコールが含まれているものは刺激になることがあるため避けましょう。
保湿剤の剤形と使い分け
| 剤形 | 特徴 | おすすめシーン |
|---|---|---|
| ローション(乳液) | 伸びがよく塗りやすい。さらっとした使用感 | 夏・汗をかく時期・全身のベースケア |
| クリーム | 適度な保湿力。刺激が少ない | 通年・全身ケア。多くのシーンに向く |
| 軟膏(ワセリンなど) | 油分が多く保護力が高い。べたつく | 冬・乾燥が強い部位・おむつかぶれの保護 |
ワセリン(プロペト)
ワセリンは石油由来の保護剤で、肌の表面に油分の薄い膜を作り水分蒸発を防ぎます。無香料・無添加で刺激がほとんどなく、赤ちゃんの顔に塗っても口に入っても安全で、病院でも処方される保湿剤です。
薬局で「白色ワセリン」(一般品)や「プロペト」(精製度が高い医薬品グレード)として購入できます。安価で安全性が高いのが最大のメリットです。
なお、「乳児湿疹には保湿しないほうがいい」「保湿すると悪化する」という情報を見かけることがありますが、これは誤りです。正しいケアとして保湿は必須です(ただし脂漏性湿疹の急性期は「まず洗う」が優先です)。
ヒルドイドソフト軟膏・ヒルドイドローション
「ヘパリン類似物質」という成分を含む保湿剤で、保湿力・抗炎症効果があります。病院で処方される医薬品です。市販品として「ビーソフテン」「ケアセラ」などがあります。乾燥が強い赤ちゃんや、アトピー性皮膚炎の経過観察中に使用されることが多いです。
アレルギーが心配なときは?早期保湿の重要性
家族にアトピー性皮膚炎・喘息・食物アレルギーがある場合は、赤ちゃんもアレルギー体質を持つリスクが高まります。
国立成育医療研究センターが2014年に行った小規模な研究では、新生児期から保湿剤を塗り始めた赤ちゃんはアトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低かったという結果が報告されました。ただし、その後に行われた英国の大規模な研究(BEEP試験)やコクランレビューでは、保湿剤の使用がアトピー性皮膚炎の発症を予防する効果は確認されておらず、むしろ皮膚感染症のリスクがわずかに増える可能性も指摘されています。そのため「保湿すればアトピーを防げる」と確定した効果ではありませんが、乾燥そのものへのケアとして保湿を行うこと自体は引き続き大切です。「どうせ乾燥するから」と後回しにせず、生後すぐから保湿習慣をつけましょう。
月齢別のスキンケアのポイント
| 月齢 | 多い湿疹の種類 | スキンケアのポイント |
|---|---|---|
| 0〜2ヶ月 | 新生児ざ瘡・脂漏性湿疹 | 毎日丁寧に洗う。頭皮もシャンプー。保湿は全身に |
| 2〜4ヶ月 | 脂漏性湿疹が減り、乾燥湿疹へ移行 | 洗う+保湿を継続。保湿量を増やす時期 |
| 4〜6ヶ月 | 乾燥性湿疹・あせも(夏) | 全身保湿を毎日。室温管理・通気に注意 |
| 6〜12ヶ月 | 乾燥性・アトピー出現も | 2ヶ月以上繰り返す・かゆみ強い場合は受診を |
受診の目安——こんな時は病院へ
多くの乳児湿疹は家庭のスキンケアで改善しますが、以下の場合は小児科または皮膚科を受診してください。
🔴 すぐに受診(急ぎ):
- 湿疹がジクジクと膿んでいる(細菌感染の可能性)
- 小さな水ぶくれが多数でき、急に広がっている(ヘルペスウイルスによる合併症の可能性)
- 発熱を伴っている
- 湿疹が急激に全身に広がった
- 顔がひどく腫れている
- ぐったりしている、哺乳が悪い、あやしても反応が乏しいなど、全身状態が悪い
🟡 数日以内に受診(早めに):
- 2〜3週間スキンケアを続けても改善しない
- かゆみが強く、赤ちゃんが顔をこすりつけて眠れない
- 全身に広がっている
- アトピー性皮膚炎かどうか診断してほしい
- おむつかぶれがなかなか治らない
何科に行く?
- 小児科:湿疹以外にも発熱・食欲・体重増加など他の心配がある場合。かかりつけ医として相談しやすい
- 皮膚科(小児皮膚科):湿疹が主な悩みで専門的な診断・治療を希望する場合
病院で処方される薬
軽度の乳児湿疹には保湿剤(プロペト・ヒルドイドソフト軟膏など)が処方されます。炎症が強い場合はステロイド外用薬が処方されることがあります。
「赤ちゃんにステロイドは怖い」と思うパパ・ママは多いですが、赤ちゃんは肌が薄いため弱いステロイドで十分効果があり、適切な量・期間で使えば安全性は確認されています。逆に炎症を放置してしまうほうが、かゆみで眠れずストレスになったり、皮膚バリアが壊れてアレルギー感作が進んだりするリスクがあります。医師の指示に従って正しく使うことが大切です。






まとめ
- ✅ 乳児湿疹はとても多く見られる肌トラブル。0〜3ヶ月の多くは脂漏性湿疹や新生児ざ瘡で自然改善する
- ✅ 主な種類:新生児ざ瘡・脂漏性湿疹・乾燥性湿疹・あせも・おむつかぶれ
- ✅ スキンケアの基本は「毎日やさしく洗う」+「入浴後5〜10分以内に保湿」
- ✅ 保湿剤は無香料・低刺激のものを選ぶ。ワセリン・プロペトが安全で使いやすい
- ✅ 生後すぐからの早期保湿は乾燥ケアとして大切。アトピー発症予防効果については研究によって結果が分かれており、確立された効果ではない
- ✅ アトピーとの見分けポイントは「2ヶ月以上繰り返す・かゆみが強い」
- ✅ ジクジク膿む・発熱・急に広がる場合はすぐ受診を
- ✅ 処方されたステロイドは医師の指示通りに使うことが大切——放置より早く治す
乳児湿疹が続くと「何かひどい病気なんじゃないか」と不安になりますが、正しいスキンケアと必要に応じた受診で多くは改善します。心配な点があればかかりつけの小児科や皮膚科に気軽に相談してください。最終的な判断は必ずかかりつけ医にご相談ください。

