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リウマチ・膠原病患者の手術・麻酔ガイド|術前の薬中止スケジュール・頸椎評価をリウマチ専攻医が解説

「手術を受けることになったのですが、リウマチの薬はどうすればいいですか?」——外来でとても多い質問です。リウマチ・膠原病の患者さんが手術を受ける際には、術前の薬の調整・頸椎評価・ステロイド補充など、特有の注意点があります。リウマチ内科専攻医が詳しく解説します。

患者さん
先生、膝の手術を予定しているのですが、リウマチの薬はどうすればいいですか?

子育て内科医
手術の前後で薬の調整が必要なものがあります。手術が決まったら早めにリウマチ科と外科の両方に相談することが大切です!

目次

手術前に必ず伝えること

外科医・麻酔科医への情報提供

手術を担当する外科医・麻酔科医には以下の情報を必ず伝えましょう。

  • 現在服用・使用しているすべての薬(お薬手帳を持参)
  • 膠原病・リウマチの診断名と罹病期間
  • ステロイドの長期使用歴
  • 頸椎(首の骨)の異常の有無
  • 最近の疾患活動性(寛解か活動期か)
💡 ポイント:手術が決まったら、リウマチ科・膠原病科に早めに連絡してください。術前の薬調整スケジュールを立てるため、少なくとも手術の4〜8週前には相談が必要です(リツキシマブ使用中の場合は6ヶ月前が必要です)。

術前の薬の調整スケジュール

メトトレキサート(MTX)

かつてはMTXを術前に中止することが一般的でしたが、2022年のACR/EULAR周術期管理ガイドラインでは、感染リスクが低い待機的手術(人工関節置換術など)においてはMTXを継続することが推奨されています。

  • 一般的な待機手術:継続可(中止による疾患活動性悪化のリスクが上回るため)
  • 感染リスクが特に高い手術・患者(糖尿病・腎機能低下など):主治医と相談

生物学的製剤

生物学的製剤は免疫を抑制するため、周術期感染リスクを高める可能性があります。一般的には術前に1〜2投与サイクル分(約1〜5半減期)中止します。

薬剤 術前中止タイミング(目安)
TNF阻害薬・エタネルセプト(週1回) 最終投与から1週後に手術
TNF阻害薬・アダリムマブ(2週毎) 最終投与から約3週後に手術
TNF阻害薬・ゴリムマブ(4週毎) 最終投与から約5週後に手術
TNF阻害薬・インフリキシマブ(8週毎) 最終投与から約9週後に手術
アバタセプト(点滴:月1回) 最終投与から約4週後に手術
アバタセプト(皮下注:週1回) 最終投与から約1週後に手術
リツキシマブ(リツキサン) 最終投与から約6ヶ月後(または次回投与予定直前)に手術 ※他剤と大きく異なる
IL-6阻害薬・トシリズマブ点滴(4週毎) 最終投与から約4週後に手術
IL-6阻害薬・トシリズマブ皮下注(週1回) 最終投与から約1週後に手術
⚠️ リツキシマブ使用中の方へ:リツキシマブはB細胞を長期にわたって枯渇させるため、他の生物学的製剤と異なり最終投与から約6ヶ月後に手術を計画する必要があります。手術が決まったらできるだけ早く(少なくとも6ヶ月前に)リウマチ科に相談してください。

JAK阻害薬

JAK阻害薬は半減期が短いため、生物学的製剤よりも早期に血中から消失します。一般的には術前3〜7日前に中止します(薬剤・施設により異なる)。

  • バリシチニブ・ウパダシチニブ・トファシチニブ:術前3日前に中止(2022 ACR/AAHKS最新推奨)
  • フィルゴチニブ:主治医と相談

ステロイド

ステロイドを長期服用している場合は決して自己中断しないことが重要です。

  • 手術のストレスに対して副腎が十分なコルチゾールを分泌できない場合があるため、術中〜術後に補充(ストレスドーズ)が必要になることがある
  • 麻酔科医・外科医にステロイド長期服用歴を必ず伝える
  • プレドニゾロン5〜20mg/日を3週間以上服用中の場合は要注意(個別評価が必要)、20mg/日以上では高リスクでストレスドーズが強く推奨される
⚠️ 重要:ステロイドは手術直前まで通常量を継続し、術当日・術後に補充量を追加する形が一般的です。自己判断で中止しないでください。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

NSAIDsは血小板機能を抑制するため、術前に中止が必要です。

  • ロキソプロフェン・ジクロフェナクなど:術前3〜7日前に中止
  • アスピリン:低用量の場合は心臓病など適応によって継続することもある(担当医と相談)

術前評価:頸椎の確認(関節リウマチ患者に重要)

なぜ頸椎評価が必要なの?

関節リウマチでは、頸椎の関節(特に第1・2頸椎間の環軸椎関節)が侵されることで、環軸椎亜脱臼(かんじくついあだっきゅう)が生じることがあります。

全身麻酔では気管挿管時に頸部を後屈させるため、亜脱臼があると脊髄圧迫・麻痺のリスクがあります。このため、全身麻酔を伴う手術前には頸椎の評価が欠かせません。

術前評価の内容

  • 頸椎X線(前後・側面・屈曲・伸展位):環軸椎亜脱臼の有無を確認
  • 症状がある場合(後頭部痛・上肢のしびれ・歩行障害など):頸椎MRI
  • 亜脱臼が確認された場合:麻酔科医に情報共有し、挿管時に頸部保護を行う

周術期の感染対策

感染リスクが高い理由

膠原病・リウマチの患者さんは以下の理由から、手術後の感染リスクが一般患者より高くなることがあります。

  • 免疫抑制薬・生物学的製剤・ステロイドによる免疫機能の低下
  • 疾患活動性が高い場合の全身状態の悪化
  • 栄養状態の低下

感染予防のために

  • 手術前に疾患活動性を可能な限り低く保つ
  • 術前のワクチン接種(肺炎球菌・インフルエンザ等)を完了させておく
  • 口腔内の状態を整える(歯科受診)
  • 禁煙(術後感染・創傷治癒に影響)

術後の薬の再開

生物学的製剤・JAK阻害薬の再開

術後の感染がなく、創部が良好に治癒していることを確認した上で再開します。一般的には術後2〜4週間後を目安としますが、手術の種類・術後経過によって異なります。

  • 外科医とリウマチ科の医師が連携して再開時期を決定
  • 自己判断で再開・中止しない

ステロイドの再開

術後は通常量に戻します。ストレスドーズを使用した場合は、術後数日かけて通常量に漸減します。

📖 本記事の休薬期間の主な出典

  • Goodman SM, et al. 2022 American College of Rheumatology/American Association of Hip and Knee Surgeons Guideline for the Perioperative Management of Antirheumatic Medication in Patients With Rheumatic Diseases Undergoing Elective Total Hip or Total Knee Arthroplasty. Arthritis Care Res. 2022;74(9):1399-1408. / Arthritis Rheumatol. 2022;74(9):1464-1473.
  • 日本リウマチ学会「生物学的製剤治療中の手術に関する提言」
  • Perioperative management of immunosuppressive therapy. UpToDate(随時更新)

※薬剤・手術の種類・患者さんの状態によって異なる場合があります。必ず担当医にご確認ください。

まとめ:リウマチ・膠原病患者が手術を受ける際のポイント

  • ✅ 手術が決まったら早めにリウマチ科に連絡(4〜8週前が目安)
  • ✅ 生物学的製剤は薬剤により中止期間が大きく異なる(エタネルセプト約1週〜インフリキシマブ約9週、リツキシマブは約6ヶ月
  • ✅ MTXは一般的な待機手術では継続可(2022 ACR/AAHKSガイドライン)
  • ✅ JAK阻害薬は術前3日前に中止(2022 ACR/AAHKSガイドライン最新推奨)
  • ✅ ステロイドは自己中断禁止、術中のストレスドーズを考慮
  • ✅ RAでは頸椎(環軸椎亜脱臼)評価が必須
  • ✅ 術後の薬の再開は外科・リウマチ科で連携して決定

患者さん
薬ごとに対応が違うんですね。手術が決まったらすぐに先生に相談します!

子育て内科医
ぜひそうしてください。早めに連絡してもらえれば、スムーズに準備が整えられます。手術の成功を祈っています!

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