「リウマチがあると食事に気をつけることはありますか?」——外来でよく聞かれる質問です。膠原病・リウマチの患者さんには、薬との相互作用や症状に合わせた食事の注意点があります。この記事では、リウマチ内科専攻医が食事・栄養について詳しく解説します。
患者さん


膠原病・リウマチと食事の基本的な考え方
特別な「リウマチ食」はない
結論から言うと、「膠原病・リウマチだからこれを食べなければいけない」という特別な食事療法はありません。基本はバランスの良い食事が大原則です。
ただし、使用している薬の種類・合併症(高血圧・糖尿病・骨粗鬆症など)・疾患の種類によって、注意すべき点が異なります。
食事で意識すること
- 薬との相互作用を避ける
- ステロイドの副作用(高血圧・糖尿病・骨粗鬆症)を食事で予防・軽減する
- 炎症を抑える栄養素を積極的に摂る
- 免疫機能を適切に保つ
薬別の食事・飲み物の注意点
メトトレキサート(MTX)服用中の注意
MTXは葉酸代謝を阻害する薬です。以下の点に注意が必要です。
アルコールはMTXの肝毒性を増強します。ACRは禁酒を推奨しており、日本の診療でも飲酒を控えることが強く推奨されています。なお英国リウマチ学会(BSR)では週14単位以内であれば有意なリスク上昇がないとする報告もありますが、安全のためできる限り禁酒をお勧めします。
- 葉酸を含む食品を積極的に摂る:ほうれん草・ブロッコリー・枝豆・レバーなど(MTXの副作用軽減のため葉酸補充薬が処方されることも多い)
- MTX服用日・翌日は悪心が出やすいため、消化の良いものを中心に
シクロスポリン・タクロリムス服用中の注意
グレープフルーツ(およびはっさく・スウィーティーなど一部の柑橘類)に含まれるフラノクマリン類がCYP3A4などの代謝酵素を阻害し、シクロスポリン・タクロリムスの血中濃度を急上昇させます(タクロリムスではP-糖タンパク阻害も関与)。腎障害・神経毒性のリスクが高まるため、グレープフルーツジュース・果実は禁止です。
ステロイド(プレドニゾロン)服用中の注意
ステロイドは食塩(ナトリウム)を体内に貯留しやすくするため、長期服用中は塩分制限が重要です。
- 塩分:1日6g未満を目標に(高血圧・むくみの予防)
- カルシウム・ビタミンDを積極的に摂る(骨粗鬆症予防):乳製品・小魚・豆腐・日光浴
- 糖質の過剰摂取を避ける(ステロイド性糖尿病の予防)
- カリウムを多く含む食品(野菜・果物)を摂る(低カリウム血症の予防)
ワルファリン服用中の注意(抗リン脂質抗体症候群など)
納豆に含まれるビタミンKがワルファリンの効果を著しく減弱させます。また、クロレラ・青汁などビタミンKを多く含むサプリメントも同様に禁止です。
積極的に摂りたい栄養素
オメガ3脂肪酸(抗炎症効果)
EPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸には炎症を抑える効果があり、関節リウマチの疼痛・こわばり軽減に寄与するとされています(複数のメタアナリシスで支持)。
- 青魚(サバ・イワシ・サンマ・鮭):週2〜3回を目標に
- クルミ・亜麻仁油(αリノレン酸)
- 医師に相談の上、フィッシュオイルサプリも選択肢
カルシウム・ビタミンD(骨粗鬆症予防)
ステロイドを使用している患者さんは骨粗鬆症のリスクが高まります。
- カルシウム:1日1,000〜1,200mgを目標(ACR 2022ガイドライン推奨値)(牛乳・ヨーグルト・チーズ・豆腐・小松菜・小魚)
- ビタミンD:目安600〜800 IU/日(ACR推奨)。日光(紫外線)を1日15〜30分浴びる、サーモン・卵黄・きのこ類。SLEなど日光を避ける必要がある方はサプリメントで補充を検討する
抗酸化物質(ビタミンC・E・ポリフェノール)
炎症反応で生じる酸化ストレスへの対抗として、抗酸化物質を含む食品が有用とされます。
- 色とりどりの野菜・果物(β-カロテン・ビタミンC)
- 緑茶(カテキン)
- オリーブオイル(オレオカンタール:抗炎症作用)
タンパク質(筋力維持)
膠原病・リウマチでは炎症や廃用性筋萎縮により筋肉量が低下しやすくなります。1日体重1kgあたり1.0〜1.2gのタンパク質を意識して摂りましょう。
- 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品をバランス良く
避けた方がよい食品・生活習慣
過剰な塩分
ステロイド使用の有無にかかわらず、塩分の過剰摂取は高血圧・むくみ・腎障害のリスクを高めます。加工食品・外食・ラーメンなどの高塩分食品は控えめに。
アルコール
- MTX服用中:禁酒(肝毒性増強)
- その他の免疫抑制薬使用中も過量飲酒は避ける
- 痛風合併の場合:プリン体を多く含むビール・内臓系おつまみは要注意
プリン体(痛風・高尿酸血症合併の場合)
痛風や高尿酸血症を合併している場合、プリン体を多く含む食品の過剰摂取を避けます。
- 控えめに:レバー・白子・イワシ・カツオ・ビール
- 水分を1日2L以上摂って尿酸を排泄
高カロリー・高脂肪食
ステロイド服用中は食欲増進・体重増加が起こりやすいです。過剰な糖質・脂質の摂取はステロイド性糖尿病・高脂血症の悪化につながります。
疾患別の食事ポイント
SLE(全身性エリテマトーデス)
- 紫外線に敏感なため、ビタミンDは食事・サプリで補充(過度の日光浴はNG)
- 腎炎合併の場合は塩分・タンパク質制限が必要になることも(主治医の指示に従う)
- アルファルファ(新芽・サプリメント):含まれるL-カナバニンという成分がSLEを悪化させる可能性があり注意
強皮症(全身性強皮症)
- 食道病変・逆流性食道炎がある場合:少量頻回食、食後2時間は横にならない
- 嚥下障害がある場合はとろみ食・刻み食の検討
- 吸収障害がある場合は栄養補助食品の活用
シェーグレン症候群
- 口腔乾燥があるため、水分を十分に摂る
- 虫歯リスクが高いため、糖分の多い飲食物・間食を控える
- キシリトールガムが口腔乾燥の緩和に有用
まとめ:膠原病・リウマチと食事の重要ポイント
- ✅ 基本はバランスの良い食事。特別な「リウマチ食」はない
- ✅ MTX服用中はアルコール禁止
- ✅ シクロスポリン・タクロリムス服用中はグレープフルーツ禁止
- ✅ ワルファリン服用中は納豆・クロレラ禁止
- ✅ ステロイド服用中は塩分制限・カルシウム・ビタミンDを意識
- ✅ 青魚・野菜・果物など抗炎症食品を積極的に







