「リウマチの薬を飲んでいますが、歯科治療を受けても大丈夫ですか?」「抜歯の前に薬を止める必要がありますか?」——リウマチ・膠原病の患者さんから歯科治療に関する質問をよく受けます。この記事では、リウマチ・膠原病患者さんが歯科治療を受ける際の注意点をリウマチ内科専攻医が解説します。
患者さん


リウマチ・膠原病患者が歯科治療前に伝えること
歯科医師に必ず伝える情報
歯科受診の際には、以下の情報を歯科医師に必ず伝えましょう。お薬手帳を持参するのが最も確実です。
- 診断名(関節リウマチ・SLE・強皮症など)
- 現在服用中のすべての薬(免疫抑制薬・ステロイド・生物学的製剤など)
- ビスホスホネート系薬剤・デノスマブの使用歴(骨粗鬆症治療薬)
- 抗凝固薬・抗血小板薬の使用
ビスホスホネート・デノスマブと顎骨壊死(MRONJ)
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)とは
リウマチ・膠原病患者さんはステロイドによる骨粗鬆症を防ぐため、ビスホスホネート系薬剤(アレンドロン酸・リセドロン酸等)やデノスマブ(プラリア)を服用していることが多くあります。これらの薬を使用中に抜歯・インプラント・歯周外科手術などの観血的処置を行うと、まれに顎骨壊死(MRONJ)が生じることがあります。
・抜歯・インプラント・歯周外科など観血的処置の前に、必ず歯科医師と処方医(リウマチ科)の両方に相談してください。
・日常的な歯科治療(むし歯治療・歯石除去など)は通常問題ありません。
・MRONJのリスクはビスホスホネートに関しては経口薬より静注薬(ゾレドロン酸等)の方が高く(経口薬で0.1%前後、静注薬で2〜15%程度)、また骨粗鬆症用量より癌治療用高用量の方が高くなります。デノスマブ(プラリア)については研究により差があり、注射薬だから一律に高リスクとは言い切れませんが、処方医・歯科医への相談が必要です。
MRONJの予防
- ビスホスホネート開始前に歯科受診し、抜歯が必要な歯を先に処置しておく
- 日頃から口腔衛生を徹底(歯磨き・フロス・定期的な歯科クリーニング)
- 義歯の調整を定期的に行う
- 抜歯が必要な場合は処方医・歯科医が連携して休薬の要否を判断。なお経口ビスホスホネートの短期休薬(1〜3ヶ月)はMRONJリスクを有意に下げないというエビデンスもあり、必ずしも休薬が必要とは限りません(AAOMS 2022)
免疫抑制薬・ステロイドと歯科治療
感染リスクへの注意
MTX・タクロリムス・ミコフェノール酸モフェチル・生物学的製剤などの免疫抑制薬を使用中は、感染に対する抵抗力が低下しています。歯科処置(特に抜歯などの外科的処置)後は感染が広がりやすい可能性があります。
- 抜歯・外科処置後の発熱・腫脹・膿の排出には早めに対応
- 処置後の抗菌薬の予防投与は歯科医師・主治医が判断
ステロイドとストレス補充
長期ステロイド服用中の患者さんでは、特に全身麻酔を要する大きな歯科手術の際に副腎クリーゼ予防のためのストレス補充を要する場合があります。最新のエビデンス(JADA 2023等)では、局所麻酔下の抜歯などの小手術ではルーティンのストレス補充は必ずしも必要ではないとする考え方もあります。いずれにせよ処置前に必ず主治医に相談しましょう。
出血への注意
抗凝固薬(ワルファリン・DOACなど)や抗血小板薬(アスピリン等)を服用している場合、抜歯後の出血が長引くことがあります。歯科医師に必ず伝え、休薬の要否を処方医と相談してください。
強皮症患者の歯科治療上の特別な注意点
開口障害
強皮症では顔面・口周囲の皮膚硬化により開口困難(口が大きく開かない)が生じることがあります。歯科治療中に長時間口を大きく開けていることが難しい場合があります。
- 歯科医師に強皮症・開口障害があることを必ず伝える
- こまめに口を閉じる休憩をとりながら治療を進めてもらう
- 開口訓練(口周りのストレッチ)を日頃から行う
ドライマウス(口腔乾燥)
強皮症・シェーグレン症候群では唾液分泌が低下し、口腔乾燥が生じます。唾液の抗菌作用が低下するため、むし歯・歯周病・口腔カンジダ症のリスクが高まります。
- 定期的な歯科クリーニング(3〜6ヶ月毎)が特に重要
- フッ化物配合歯磨き粉の使用
- 口腔保湿ジェル・スプレーの活用
- 糖分の多い飲食物を控える
シェーグレン症候群患者の口腔ケア
う蝕(むし歯)・歯周病リスクへの対策
シェーグレン症候群では唾液分泌低下により、多発性う蝕(むし歯)が急速に進行することがあります。歯頸部(歯と歯ぐきの境目)に多発するのが特徴的です。
- 3〜4ヶ月毎の定期歯科受診を強く推奨
- フッ化物ゲル・フッ化物洗口液の使用
- キシリトール含有ガム・タブレットで唾液分泌を刺激
- 就寝前の丁寧な口腔ケア
リウマチと歯周病の関係
歯周病とRAは双方向に影響する
近年の研究で、歯周病と関節リウマチには深い関係があることが明らかになっています。
- 歯周病菌(P. gingivalis)が持つPPAD酵素が宿主タンパクのシトルリン化を誘導し、抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA)の産生を促すことでRA発症のトリガーになりうるという仮説がある
- RA患者では歯周病の有病率・重症度が高い
- 歯周病治療によりRAの疾患活動性(DAS28)が改善したという報告もある
つまり、口腔ケアはリウマチ治療の一環ともいえます。定期的な歯科受診・口腔衛生の維持がRA管理にも役立ちます。
まとめ:リウマチ・膠原病患者の歯科治療ポイント
- ✅ 歯科受診時はお薬手帳持参・すべての薬を歯科医師に伝える
- ✅ ビスホスホネート・デノスマブ服用中の抜歯は処方医・歯科医に要相談(MRONJ予防)
- ✅ 免疫抑制中は歯科処置後の感染に注意
- ✅ ステロイド長期服用中は観血的処置前にストレス補充を主治医と相談
- ✅ 強皮症の開口障害・ドライマウスは歯科医師に必ず伝える
- ✅ シェーグレン症候群は3〜4ヶ月毎の定期歯科受診が特に重要
- ✅ 歯周病とRAは双方向に影響→口腔ケアがRA管理にも役立つ







