「目が乾く」「目が赤い」「視力が落ちた」——膠原病・リウマチでは、目(眼)にもさまざまな症状が出ることがあります。中には視力を脅かす重篤なものもあり、早期発見・早期治療が重要です。リウマチ内科専攻医が膠原病と目の症状について詳しく解説します。
患者さん


シェーグレン症候群の眼症状
乾燥性角結膜炎(ドライアイ)
シェーグレン症候群の最も代表的な眼症状です。涙腺がリンパ球により破壊されることで涙液分泌が低下し、角膜・結膜が乾燥します。
- 症状:目の乾き・異物感・ゴロゴロ感・充血・光過敏・視力低下
- 診断:シルマーテスト(涙液分泌量測定)・ローズベンガル染色・OCT-A
- 治療:人工涙液・ヒアルロン酸点眼・シクロスポリン点眼(日本未承認)・涙点プラグ
ドライアイへの日常ケア
- 人工涙液点眼(防腐剤フリーが望ましい)を頻回に使用
- 加湿器で室内湿度を50〜60%に保つ
- パソコン・スマートフォンの使用時間を制限し、意識的にまばたき
- コンタクトレンズの使用は眼科医と相談
関節リウマチ(RA)の眼症状
二次性シェーグレン症候群によるドライアイ
RA患者の二次性シェーグレン症候群合併率は使用する診断基準によって異なり、約5〜30%と報告されています。合併した場合、ドライアイの原因となります。
上強膜炎
白目(強膜)の表面(上強膜)に炎症が生じ、局所的な充血・軽度の痛みが出現します。比較的軽症で自然軽快することも多いですが、RAの活動性と連動することがあります。NSAIDs点眼・内服で治療します。
強膜炎
上強膜炎より深層の強膜に炎症が生じる、より重篤な状態です。激しい眼痛・充血・圧痛が特徴で、放置すると強膜菲薄化・穿孔に至る危険があります。全身性の免疫抑制治療が必要となります。
薬剤性眼合併症
RA治療薬による眼への影響も重要です。
- ヒドロキシクロロキン(HCQ):長期・高用量投与で網膜症(クロロキン網膜症)のリスク。5mg/kg/日以下の用量を守り、AAO(米国眼科学会)2025年改訂ガイドラインに基づきベースライン検査を実施し半年〜1年に1回の眼科スクリーニングが推奨される(リスク因子がなければ最初の5年間は延期可能、5年経過後は必須)
- ステロイド長期投与:後嚢下白内障・緑内障のリスク。定期的な眼科チェックが必要
SLE(全身性エリテマトーデス)の眼症状
ループス網膜症
SLEに合併する網膜の血管病変で、綿花様白斑・出血・血管閉塞などが生じます。SLEの活動性が高い時期に出現しやすく、視力障害の原因となります。定期的な眼底検査が重要です。
視神経炎・中枢神経ループス
CNSループス(神経精神ループス)の一症状として、視神経炎による視力低下・視野異常が生じることがあります。緊急の治療が必要です。
抗リン脂質抗体症候群(APS)合併例
SLEにAPSが合併した場合、網膜動静脈閉塞・虚血性視神経症のリスクが高まります。突然の視力低下は眼科への緊急受診が必要です。
脊椎関節炎・強直性脊椎炎の眼症状
急性前部ぶどう膜炎(AAU)
強直性脊椎炎・乾癬性関節炎などHLA-B27陽性の脊椎関節炎で最も多い眼合併症です。片眼の急激な充血・眼痛・羞明(まぶしさ)・視力低下が突然出現します。
- HLA-B27陽性の脊椎関節炎患者の約30〜40%に生涯で1回以上出現
- 再発を繰り返すことが多い
- 治療:散瞳薬・ステロイド点眼(早期治療が重要)
- 放置すると虹彩後癒着・眼圧上昇・白内障・視力低下に至る
強直性脊椎炎・脊椎関節炎の患者さんが以下の症状を感じたら、当日中に眼科を受診してください:
・片目の急激な充血・痛み・まぶしさ
・突然の視力低下・視野欠損
・飛蚊症の急増・光視症
ベーチェット病の眼症状
ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎・汎ぶどう膜炎)
ベーチェット病最大の脅威の一つで、前眼部〜後眼部の炎症が繰り返し生じ、失明に至る危険があります。以前の日本では内因性ぶどう膜炎の主要原因であり、失明リスクが特に高い疾患として知られています。
- 症状:充血・眼痛・かすみ目・飛蚊症・視力低下
- 特徴:発作性・再発性に生じる(しばしば突然悪化)
- 治療:シクロスポリン・インフリキシマブ(レミケード)・副腎皮質ステロイド
- インフリキシマブはベーチェット病のぶどう膜炎に対して日本で保険適用あり
ANCA関連血管炎の眼症状
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の眼症状
GPAでは眼窩・眼球周囲に肉芽腫が形成され、眼球突出・眼球運動障害・視力低下が生じることがあります。また強膜炎・ぶどう膜炎・鼻涙管閉塞による流涙過多も起こります。
膠原病患者の眼科受診の目安
定期的な眼科チェックが必要な場合
| 疾患・状況 | 受診頻度の目安 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| HCQ服用中 | ベースライン検査+年1回(5年未満はリスク因子なければ延期可、5年以上は必須) | 網膜症スクリーニング(OCT・眼底) |
| ステロイド長期服用 | 年1〜2回 | 白内障・緑内障 |
| シェーグレン症候群 | 年1〜2回 | ドライアイの程度・角膜障害 |
| ベーチェット病 | 3〜6ヶ月毎(発作時は随時) | ぶどう膜炎・眼底 |
| 強直性脊椎炎・脊椎関節炎 | 症状出現時は当日受診 | 急性前部ぶどう膜炎 |
まとめ:膠原病と目の症状のポイント
- ✅ シェーグレン症候群のドライアイは最も頻度が高い眼症状
- ✅ HCQ服用中は年1回の眼科スクリーニングが必須(網膜症予防)
- ✅ 強直性脊椎炎では急性前部ぶどう膜炎が片眼突然発症→当日眼科受診
- ✅ ベーチェット病のぶどう膜炎は失明リスクあり→定期的な眼科フォロー
- ✅ ステロイド長期投与は白内障・緑内障のリスク→定期的な眼圧・眼底チェック
- ✅ 視力低下・急激な充血・眼痛は迷わず眼科受診を







