最近、麻疹(はしか)の流行が続いています。免疫抑制薬を使っている膠原病・関節リウマチの患者さんから「ワクチンを打っていいの?」というご質問をよくいただきます。
この記事では、リウマチ内科専攻医が免疫抑制中のワクチン接種についてわかりやすく解説します。
患者さん免疫抑制薬を飲んでいますが、ワクチンを打っても大丈夫ですか?



ワクチンの種類によります。不活化ワクチンは接種できますが、生ワクチンは原則禁忌です。一緒に確認しましょう。
目次
なぜ膠原病患者はワクチンが重要?
膠原病・関節リウマチの患者さんは、疾患自体と免疫抑制薬の影響で感染症にかかりやすい状態にあります。ワクチンで予防できる感染症はしっかり予防することが大切です。
ワクチンの種類:生ワクチンと不活化ワクチン
最も重要な知識は、「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の違いです。
| 種類 | 仕組み | 免疫抑制中の接種 | 主なワクチン |
|---|---|---|---|
| 生ワクチン | 弱毒化した生きた病原体 | ⛔ 原則禁忌 | 麻疹・風疹(MR)、水痘、帯状疱疹(ゾスタバックス®)、BCG |
| 不活化ワクチン | 死んだ病原体・成分 | ✅ 接種可能 | インフルエンザ、肺炎球菌、COVID-19、帯状疱疹(シングリックス®)、B型肝炎 |
麻疹(はしか)について
近年の流行状況
2024〜2025年にかけて、麻疹の国内感染例が増加しています。海外からの輸入例を中心に、国内でも散発的な感染が報告されています。
免疫抑制患者と麻疹ワクチン
- 麻疹ワクチン(MRワクチン)は生ワクチンのため、免疫抑制中は接種禁忌
- 抗体価の確認が重要:治療開始前に麻疹抗体価を確認しておく
- 抗体価が低い場合は免疫抑制開始の4週間以上前に接種
- 免疫抑制中は接種できないため、感染予防行動(マスク・手洗い・流行地域への渡航回避)が重要
推奨されるワクチン
① インフルエンザワクチン(毎年)
- 不活化ワクチン → 免疫抑制中でも接種可能
- 毎年秋に接種を推奨
- ステロイド・生物学的製剤使用中でも接種可
② 肺炎球菌ワクチン
- PCV15(結合型)を先に接種する場合:原則1年以上あけてPPSV23(多糖体)を接種。免疫抑制患者では最短8週間に短縮可
- PCV20を使用する場合:PCV20単独で完結し、PPSV23の追加接種は不要
- 免疫抑制患者では肺炎リスクが高く、特に重要
③ 帯状疱疹ワクチン
- シングリックス®(組換えサブユニット型・不活化): 免疫抑制中でも接種可能。2回接種(通常2〜6ヶ月間隔、免疫抑制患者では1〜2ヶ月への短縮も可)。日本では免疫抑制状態にある18歳以上への適応あり(2023年6月承認)。有効率90%以上
ゾスタバックス®(生ワクチン): 免疫抑制中は禁忌
④ COVID-19ワクチン
- 不活化・mRNAワクチン → 接種可能
- 免疫抑制中は抗体産生が低下する可能性があるが、接種を推奨
⑤ B型肝炎ワクチン
- 生物学的製剤開始前にHBs抗原・抗体を確認
- 陰性の場合はワクチン接種を検討



帯状疱疹のワクチンは打てますか?



シングリックス®(不活化ワクチン)なら免疫抑制中でも接種できます。生ワクチンのゾスタバックス®は禁忌ですので注意してください。
薬剤別の注意点
生物学的製剤・JAK阻害薬
- 不活化ワクチンは、投与タイミングによらず接種可能(免疫抑制により効果が低下する可能性はある)
- 生ワクチンは禁忌。やむを得ず生ワクチンが必要な場合は生物学的製剤を1投与間隔以上休薬したうえで接種し、接種後も4週間は再投与を避ける(必ず主治医と相談)
リツキシマブ(B細胞除去薬)
- リツキシマブ投与後はB細胞が枯渇し、ワクチンへの抗体応答が著しく低下する
- インフルエンザワクチンは例外:リツキシマブ使用中でも通常スケジュールでの接種を推奨(ACR 2022ガイドライン)
- インフルエンザ以外のワクチンは、リツキシマブ最終投与から6ヶ月以上あけてから接種することが推奨される
- 次回リツキシマブ投与の2週間以上前に接種を完了させるのが理想
ステロイド
- ACR 2022ガイドラインでは、プレドニゾロン20mg/日以上では非緊急の生ワクチンを延期することが推奨されている
- 生ワクチン接種には、ステロイドに加え他の免疫抑制薬の接種4週間前からの休薬と接種後4週間の休薬継続が必要。必ず主治医と相談のこと
- 高用量ステロイド中は生ワクチン禁忌
メトトレキサート(MTX)
- インフルエンザワクチン接種後2週間、MTXを休薬すると抗体産生が改善する可能性がある(ACR 2022が条件付きで推奨)
- その他の不活化ワクチンではMTXの休薬は原則不要
まとめ
- 膠原病・RA患者こそワクチンが重要
- 生ワクチンは免疫抑制中原則禁忌(麻疹・水痘・帯状疱疹生ワクチンなど)
- 不活化ワクチンは接種可能(インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹シングリックス®・COVID-19)
- 麻疹抗体価を確認し、低ければ免疫抑制開始の4週間以上前に接種
- 帯状疱疹はシングリックス®(不活化)を選択——免疫抑制患者では18歳以上に適応あり
- リツキシマブ使用後はインフルエンザ以外のワクチンは6ヶ月以上あけてから(インフルエンザワクチンは通常スケジュールで接種可)
- 肺炎球菌ワクチンはPCV20単独またはPCV15→PPSV23(原則1年以上間隔)
- 接種タイミングは必ず主治医と相談

