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ベーチェット病とは?症状・診断・治療をリウマチ内科専攻医が解説

「ベーチェット病」という名前を聞いたことがありますか?口の中に繰り返しできる口内炎、目の炎症、皮膚や外陰部の症状など、さまざまな臓器に炎症が起こる全身性の疾患です。リウマチ内科専攻医として、今回はベーチェット病の症状・診断・治療についてわかりやすく解説します。

目次

ベーチェット病とは?

ベーチェット病は、全身の血管に炎症が繰り返し起こる慢性の炎症性疾患です。1937年にトルコの皮膚科医フルシ・ベーチェット博士によって初めて報告されました。

中東・中央アジア・東アジアにかけての地域、かつての「シルクロード」沿いに患者さんが多いことから、「シルクロード病」とも呼ばれています。日本でも比較的多く見られ、国の指定難病に指定されています。

発症の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な素因(HLA-B51という白血球の型との関連が知られています)に加え、何らかの外的な刺激が加わって免疫異常が引き起こされると考えられています。

主な症状(4主症状)

ベーチェット病には、診断の根拠となる「4主症状」があります。

① 口腔内アフタ性潰瘍

口の中に繰り返し現れる、痛みのある潰瘍(アフタ)です。ほぼすべての患者さんに見られ、しばしば最初に現れる症状でもあります。「ただの口内炎だろう」と放置されることも多いですが、年に3回以上繰り返す場合はベーチェット病を疑うきっかけになります。

② 外陰部潰瘍

陰部(女性では大陰唇・小陰唇周辺、男性では陰嚢など)に潰瘍ができます。痛みが強く、治癒後に瘢痕(跡)が残りやすいのが特徴です。この瘢痕は診断の手がかりになることがあります。

③ 皮膚症状

皮膚にもさまざまな炎症が起こります。代表的なものとして、すね(下腿)に赤く痛みのある結節ができる「結節性紅斑」、ニキビのような「毛嚢炎様皮疹」や「痤瘡様皮疹」などがあります。

④ 眼症状(ぶどう膜炎)

眼の炎症(ぶどう膜炎)が繰り返し起こります。視力低下や失明につながる可能性があり、ベーチェット病の中でも特に注意が必要な症状です。目の充血・痛み・かすみを感じたら、速やかに眼科を受診することが重要です。

患者さん
口内炎が何度も繰り返すのですが、ただの口内炎じゃないのでしょうか…

子育て内科医
繰り返す口内炎は、ベーチェット病のサインのことがあります。他に皮膚や目の症状が重なっていたら、ぜひ専門医に相談してみてください。

副症状

  • 関節症状:膝・足首などの関節が腫れて痛む関節炎。関節の変形は通常残りません。
  • 消化器症状:腹痛・下血・下痢などを繰り返すことがあります。回盲部に潰瘍ができやすいのが特徴です。
  • 神経症状:頭痛・発熱・麻痺・認知機能の変化など、中枢神経に炎症が及ぶことがあります。
  • 血管病変:静脈血栓症や動脈瘤が起こることがあります。

重症化しやすい「特殊型」

腸管型

消化管の病変が主体のタイプです。回盲部を中心に深い潰瘍ができ、腹痛・血便・穿孔などを起こすことがあります。クローン病との鑑別が重要です。

血管型

大きな血管に病変が生じるタイプです。動脈瘤の破裂や大血管の閉塞など、生命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。

神経型

中枢神経(脳・脊髄)に炎症が及ぶタイプです。頭痛・発熱・意識障害・麻痺などを来たすことがあり、後遺症が残ることもあります。

診断はどうやって行うの?

ベーチェット病には「これで確定」という単独の検査がなく、主症状・副症状の組み合わせと経過をもとに診断されます。日本では厚生労働省の定める診断基準が用いられています。

針反応(皮膚過敏反応)

ベーチェット病の診断に特徴的な検査として「針反応(皮内反応)」があります。前腕に生理食塩水を注射し、48時間後に注射部位が赤く腫れるかどうかを確認するものです。陽性の場合は診断の支持となりますが、陰性でも否定はできません。

またHLA-B51の遺伝子検査が補助的に行われることもありますが、陽性だからといって必ずしもベーチェット病とは限りません。

患者さん
検査で「確定」できないと聞いて、不安です。どうやって診断されるのでしょう?

子育て内科医
ベーチェット病は症状の組み合わせと経過を丁寧に評価して診断します。時間をかけて経過を追うことが大切ですので、専門医と一緒に確認していきましょう。

治療について

ベーチェット病の治療は、どの症状が主体か・重症度によって大きく異なります。根本的な治療法は現時点では確立されておらず、炎症をコントロールして症状を和らげることが治療の中心となります。具体的な薬剤の用量・使い方は必ず主治医にご確認ください。

口腔内アフタ・皮膚症状

口内炎や皮膚症状の基本治療として、コルヒチン(粘膜・皮膚・関節症状の発作予防に広く使用)と副腎皮質ステロイドの外用薬が用いられます。口腔内アフタに対してはアプレミラスト(オテズラ®)が使用されることがあります。難治性の場合は免疫抑制薬が検討されます。

眼症状(ぶどう膜炎)

軽症の前眼部発作にはステロイド点眼・散瞳薬が用いられます。眼発作の予防にはコルヒチンが第一選択です。効果不十分な場合はシクロスポリンやTNF阻害薬(インフリキシマブ〔レミケード®〕など)が使用されます。視力予後が不良な重症例にはTNF阻害薬の早期導入が検討されます。眼科とリウマチ・膠原病内科が連携して治療を行います。

関節炎

急性期には非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が用いられ、効果不十分な場合はステロイドの短期投与が行われます。発作予防にはコルヒチンが使用され、重症例ではメトトレキサートやアザチオプリン、インフリキシマブが検討されます。

腸管型・血管型・神経型

腸管型の軽〜中等症には5-アミノサリチル酸製剤、中〜重症にはステロイドやTNF阻害薬が使用されます。血管型にはステロイド・免疫抑制薬が主体となり、深部静脈血栓症には抗凝固療法が併用されます。神経型(急性型)にはステロイド投与後にコルヒチンで再発予防を行います。

⚠️ 重要:シクロスポリンは神経型ベーチェット病では禁忌です。神経症状がある場合は必ず主治医に伝えてください。

日常生活での注意点

  • 疲労・ストレスを避ける:過労や強いストレスが症状の再燃につながることがあります。
  • 口腔ケアを丁寧に:口の中の清潔を保つことで口内炎の頻度を減らせる場合があります。
  • 目の症状は早めに受診:目の充血・かすみ・痛みが出たら迷わず眼科または主治医に連絡してください。
  • 定期受診を続ける:症状がない時期も定期的な受診と検査を続けることが大切です。
  • 妊娠・出産について:妊娠を希望する場合は事前に主治医へ相談することをおすすめします。

まとめ

ベーチェット病は、口・皮膚・目・外陰部を主体に全身のさまざまな臓器に炎症が起こる指定難病です。「繰り返す口内炎」から始まることが多く、気づきにくい疾患でもあります。

専門医(リウマチ・膠原病内科、眼科など)と連携しながら適切な治療を続けることで、多くの患者さんが日常生活を送れるようになっています。気になる症状がある場合は、ひとりで抱え込まずまず受診してみてください。

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